研究課題/領域番号 |
21H01299
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
萩原 将也 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (00705056)
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研究分担者 |
稲木 美紀子 大阪大学, 大学院理学研究科, 講師 (10747679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 体軸形成 / オルガノイド / Gradient / 空間局在制御 |
研究実績の概要 |
当該年度は、①ハイドロゲルの空間局在制御、②液性因子の時空間濃度勾配制御、の2つの技術を確立し、論文発表を行った。ハイドロゲルの空間局在制御では、断面がL字型のフレームで囲まれた空間(ユニット)を複数持ち、ゲルを表面張力のみで各ユニットにとどめることで、複数のゲルを空間的に配置するキューブ型の培養プラットフォーム「MultiCUBE」を開発した。隣り合うユニット間でゲル同士は接触しているが、ゲルの粘性が高いこともあり、すぐには混じり合わない。ゲルの配置が終わった後にゲルを架橋し固めると、ゲル間に物理的境界がなく細胞が行き来できる一方、位置によってゲル内部の成分が異なる状態になる。これにより、細胞に空間的な情報を与えられるようになり、異なる物性を持つゲルを立体的に配置するだけでなく、特定の成長因子や細胞をあらかじめゲルに混ぜておくことで、細胞に複数要素の空間的局在を与えることができるようになった。 さらに、CUBE型の培養器内でオルガノイドに特定因子の濃度勾配を与える「Gradient-in-CUBEシステム」を開発した。本システムを用いて、iPS細胞塊から、恣意的な方向に神経外胚葉と中胚葉の分子マーカーが局在するオルガノイドを作製することができた。作製したオルガノイドは、与えた濃度勾配の方向を見失うことなく解析が可能であり、オルガノイド培養から体軸方向付与・解析までシームレスな実験ワークフローを確立した。工学技術に不慣れな実験者にも容易に扱えるプラットフォームであり、広く活用されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究科課題目的の一つである、培養環境の時空間制御技術の確立において、今年度は細胞周囲環境における、ECMの空間局在と、液性因子の濃度勾配という、発生プロセスにおける重要な2つの因子を制御する技術を確立することができた。これにより、細胞に対して適切な位置情報を与えることができるようになり、体軸形成を意識した、非対称なオルガノイドを作製することができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、これまでに確立してきた個々の制御技術が同時にできるよう、システムとしての開発を進める。 また、計測系としてイメージングのクオリティがさらに向上するように、CUBEによる多面イメージング解析をさらにハード・ソフトの面から開発を進めていく。
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