トポロジー最適化は,寸法や位置などの形状パラメータを事前に設定して最適化するパラメータ最適化とは異なり,穴の生成・消滅を含めて自由に物体を変形して,最適形状を探査する.本研究では,永久磁石モータの最適設計法を大きく拡張し,鉄心のみならず永久磁石の形状と配向を自由変化させるとともに,モータ軸方向への構造変化を包含する3次元トポロジー最適化を実現する.本研究により,電気自動車などに使用される薄型モータの性能向上を実現とするとともに,たとえば軸方向に回転子が磁石埋め込み型から表面磁石型に変化するような,全く新しいモータ3次元構造の獲得と,それによるモータ性能の飛躍的向上を目指す.さらに本最適化法を設計現場で活用可能にするため,3次元深層学習による高速化を実現する.本年度は,上記目的のために次の研究を実施した. (i)回転軸方向に段スキューを導入した3次元構造の永久磁石モータを対象として,スキュー角度とフラックスバリア構造のパラメータ・トポロジー同時最適化を行った.この結果,製造誤差に頑健かつトルクリプルの低いモータ構造を得ることができた. (ii)エアモビリティ―などに用いられる表面磁石モータの多材料トポロジー最適化を行った.この結果,永久磁石,フラックスバリア,鉄心からなる新しい回転子構造を得た.またこの構造により,従来のハルバッハ型磁石よりも高いトルク密度を実現できることを示した. (iii)異なる構造の永久磁石モータの多目的最適化を同時に行うために,新しいモンテカルロ木探索法を開発した.本手法により,U字型,V字型,I字型およナブラ型永久磁石配置のモータ構造を比較しつつ,フラックスバリアや永久磁石寸法を同時に最適化できる.従来手法ではこのような同時最適化を行うことは難しい.本手法を用いることで,異なる構造の永久磁石モータから成るパレート解を得ることができる.
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