研究課題/領域番号 |
21H01312
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
竹本 真紹 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (80313336)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超高速モータ / 超高速 / 高出力密度化 / 高効率化 / 磁石同期モータ |
研究実績の概要 |
研究代表者は,4極集中巻構造の超高速モータにおいて,10万rpmという超高速回転下で高出力密度化と高効率化を両立するために,(a) 電気伝導率が非常に小さいネオジムボンド磁石の採用,(b) 固定子にストレートティース形状を採用,(c) 回転子の磁石とシャフトの間に半径方向に薄い電磁鋼板のコアを挿入,(d) 巻線に使用する導線の線径を細くし,導線の並列数を増加,という4個の改善点を同時に備えた新構造を提案している。そこで,2021年度は以下の内容について研究を実施した。 ・「新構造について電磁構造に加えて風損・冷却・危険速度の影響といった機械構造を連成した試作機の詳細な解析設計および設計手法の確立」 これまでは,新構造について電磁場解析のみで検討を行ってきた。しかし,実際に超高速モータの試作機を製作するには,風損・冷却・危険速度などの影響も考慮する必要があるため,電磁場解析に加えて,流体解析,熱解析,応力解析,振動解析といった機械構造についても連成して大規模に解析を実施することで,試作機を設計する必要がある。そこで,新構造について電磁構造に加えて風損・冷却・危険速度の影響といった機械構造を連成した試作機の詳細な解析設計を実施した。 ・「SiC-MOSFETを用いた高周波スイッチングが可能な超高速モータ用のドライブシステムの製作」 100,000 rpmで4極駆動を実現し,スイッチングリプル電流などによる鉄損を抑制するには,高周波スイッチングによる高精度な電流制御を実現することで,3.33 kHzという非常に高い周波数の電流をひずみの少ない正弦波で通電する必要がある。そのために,SiC-MOSFETを用いたPWMインバータとそのコントロールシステムを製作し,その動作検証を行った。その際,速度制御系や電流制御系などの制御プログラムの製作も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に計画していた下記の研究内容を無事に実施することができ,計画通りの研究成果をほぼ得ることができたので,研究の進捗状況は,「おおむね順調に進展している」と評価できる。 ・「新構造について電磁構造に加えて風損・冷却・危険速度の影響といった機械構造を連成した試作機の詳細な解析設計および設計手法の確立」 ・「SiC-MOSFETを用いた高周波スイッチングが可能な超高速モータ用のドライブシステムの製作」 ただし,新型コロナウィルスの影響で納期が大幅に伸びてしまったことから,高周波スイッチングした際の高調波電流成分を正確に計測するための計測器が購入できなかった。そのため,製作した超高速モータ用ドライブシステムにおいて,スイッチング周波数を変化させた際の高調波電流成分への影響を評価できなかったので,改めて,2022年度に評価実験を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は,4極集中巻構造の超高速モータにおいて,10万rpmという超高速回転下で高出力密度化と高効率化を両立するために,(a) 電気伝導率が非常に小さいネオジムボンド磁石の採用,(b) 固定子にストレートティース形状を採用,(c) 回転子の磁石とシャフトの間に半径方向に薄い電磁鋼板のコアを挿入,(d) 巻線に使用する導線の線径を細くし,導線の並列数を増加,という4個の改善点を同時に備えた新構造を提案している。そこで,2022年度は以下の内容について研究を実施する。 ・「新構造を備えた超高速モータの製作」 前年度に設計した新構造を備えた超高速モータを実際に製作する。製作過程で注意しなければならないのが,コアを製作する際,加工した電磁鋼板を回し積みしながら積層することである。僅かな加工誤差や電磁鋼板の圧延方向とその直交方向における透磁率や鉄損特性の差が,超高速モータにおいて,無視できない損失分布の不平衡に直結するためである。加えて,安定な超高速回転の実現には,回転子のバランスが重要であり,設計段階から注意する。 ・「製作した新構造を備えた超高速モータとSiC-MOSFETを用いたドライブシステムを組み合わせることで,実機による実負荷試験の実施と新構造の有効性の検証 SiC-MOSFETを用いた高周波スイッチングが可能なドライブシステムと新構造を備えた超高速モータの試作機を組み合わせ,100,000 rpmにおいて安定な運転が実現できるように制御システムの作りこみを実施する。安定な超高速回転が実現できたら,実負荷試験を実施することで,提案構造とその設計手法の有効性を検証する。また,スイッチング周波数を変化させた際の高調波電流成分の影響についても評価する。
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