研究課題/領域番号 |
21H01322
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田久 修 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (40453815)
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研究分担者 |
藤井 威生 電気通信大学, 先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター, 教授 (10327710)
太田 真衣 福岡大学, 工学部, 助教 (20708523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 無線センサネットワーク / LPWA / 合成波形識別 |
研究実績の概要 |
初年度では,合成波形識別における基本原理の確立を中心に研究を進めた.多数の無線機から受信機への同時アクセス時において,受信信号の合成波形からアクセスした無線機の数を識別する方法を確立した.各無線機には固有の局発発振器の周波数揺らぎである周波数オフセットがある.周波数オフセットにより受信機の合成波形の位相は,アクセスする無線機の数に応じて大きくなることに注目した.そこで,受信信号の位相分散を検出する方法を確立し,アクセス無線機を1あるいは2台以上の識別を可能にした.計算機シミュレーションによる評価により識別精度を明らかにしている. 次に,合成波形からモニタリング環境の状態を識別する方法として,データベース連携による環境識別法を確立した.電波伝搬環境をモニタリング対象として,電波源の位置を環境決定の事象として注目した.事前観測により,電波源の位置に対応した各センサのセンシング情報を同時送信した場合の合成波形の特徴を記録した.そして,実際の環境モニタでは,合成波形と事前学習の結果との一致度を評価することで,電波源の位置を高精度に推定することを実現した.レイトレーシングシミュレーション及び屋外測定実験により,電波源の位置推定精度を評価し,合成波形識別による環境識別法の有効性を明らかにした.また,発展として,パケットレベルのインデックス変調に,合成波形識別を適用を進めた. 合成波形識別によるイベント認識を活用した環境適応型センサネットワークの実現に関して、研究初年度は無線環境のセンサ情報集約による無線環境認識手法の検討と、電波センサ情報を集約する際に、信頼性の低い電波センサからの情報を過去の履歴を活用して除去し、無線環境誤差を最小化する手法を検証しその性能評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の初年度にあたる本年度は,合成波形識別の基本原理を確立することを重点的に進めた.成果として,複数の無線機による同時アクセス環境における,アクセス数の識別方法の基本法を確立した.そして,複数のセンサによるセンシング情報が無線通信で合成した受信信号からモニタリング対象の状況を識別する方法として,データベースと連携する方法を確立した.そして,センサ情報の信頼性を考慮した上で,弁別する方法を確立した.これらの成果は合成波形の基本原理を構成する要素技術となり,来年度予定している要素技術の高度化に向けた基盤技術となっている.以上の研究内容は当初計画に含まれる実施内容であり,その研究成果は予定通りに得られたといえる. 発展的要素として,現在,パケット送信の時間及び周波数を切り替えることで情報を伝送するインデックス変調の提案を進めている.このインデックス変調と受信波形の電力分布を捉える合成波形識別を融合することで,センサ情報の分布状況を識別することが可能になった.この方法は来年度計画であった,合成波形識別を利用した個別情報の検出法に応用することで,受信波形分布を起点とした個別パケットの信号分離へと発展できる.また,インデックス変調は実装評価を進めており,実機実験を通して合成波形識別を検証する実験環境として利用できる.これらの評価結果は来年度計画に含まれた内容であり,先行して一部の成果が得られたと考えられ,当初計画以上の成果が得られたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した合成波形識別法の基本技術のさらなる高度化に向けて,次の研究課題を計画している. 1.合成波形識別を高度化する.同時アクセス無線機の数を識別する方法として位相分散に加えて,他の受信波形の特徴量を検出する方法を確立する.多数の特徴量を利用した多次元識別を実現し,推定可能なアクセス無線機の増加を実現する.2.合成波形識別による環境適応無線機を実現する.合成波形から識別したモニタリング結果を利用し,環境決定する因子を特定したうえで,無線アクセス方法の切り替えを進める.これにより,パケット型無線センサネットワークにおけるパケット収集成功率の向上を目指す.令和3年度までにパケットの送信時間等を切り替えることで情報を付加するインデックス変調と合成波形識別の融合検討を開始している.この検討により,合成波形識別の結果をパケットアクセスに適用する検証を進める.3.合成波形識別における環境モニタリングの識別精度の向上を進める.令和3年度にデータベース連携により,環境を決定する事象を識別する方法を確立した.事象の識別精度を向上するため,事前観測結果と実際の観測結果との識別精度の改善をする技術改良を進める.現状,波形信号とベクトル信号の二乗距離を識別子として用いているが,特徴差が顕著に現れる,距離の表現法について検討を進める.4.センサ情報の正当性に関する初年度としての研究成果は十分得られたため、次年度はこれらの観測結果による無線チャネルの状態に合わせて、通信品質を学習的に予測した上で、無線チャネルの適応選択手法の検討を実施予定である。5.センサ情報を利用したチャネルアクセス方法に関して検討を進める.
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