研究課題/領域番号 |
21H01357
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
齊藤 準 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (00270843)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気力顕微鏡 / 交流磁化過程 / 磁壁移動 / 磁化回転 |
研究実績の概要 |
(1)磁壁移動イメージング法の開発とその応用 ソフト磁性薄膜の磁化過程は、磁場の周波数が低いときには磁壁の移動により起こる。ここでは、磁壁が移動する際に、磁性体探針が磁壁から発生する磁場を周期的に受けることで発生する交番磁気力を検出することにより磁壁移動の可視化を行う手法を開発した。4ミクロン角のパーマロイ・パターンド薄膜の観察においては、最大検出周波数は研究開始当初の観察試料に正弦波磁場を印加する手法では数100 Hzであったが、観察試料に振幅変調磁場を印加し磁壁移動距離を周期的に変化させる手法を新たに提案することにより最大検出周波数を10 kHz程度まで増加させることに成功した。新規手法における計測信号強度は原理的に周波数が増加しても変化しないことが定式化によりわかった。 (2)磁化回転過程における局所磁化率イメージング法の開発とその応用 ソフト磁性薄膜に印加する磁場周波数の増加に伴い磁壁移動が終了した後に主となる、観察試料の磁区内の磁化の方向が磁場方向に近づくように変化する磁化回転過程を局所的な交流磁化率の計測により可視化することを目的として、交流磁化率の高感度検出方法を検討した結果、超常磁性探針(探針磁化が加わる磁場の方向に向き、探針磁化の大きさが磁場の大きさに比例して可逆的に変化)を用い、ソフト磁性薄膜に振幅変調磁場を加える手法が有効であることがわかった。ソフト磁性薄膜が用いられている磁気記録ヘッドの主磁極部分で、磁気ヘッドの動作周波数である1 GHzにおいて、磁化回転過程により発生する高周波磁場のイメージングに成功した。 (3) 強磁性共鳴イメージング法の開発とその応用 強磁性共鳴イメージングに必要となる高効率の交流磁場印加機構を、導波管進行波アンテナをベースとして試作し、25 GHz程度までのマイクロ波を発生させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に照らし、「6.研究実績の概要」において、研究実施計画の項目ごとに述べたように、おおむね当初計画した成果を得ているので、(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画を踏襲し、研究を推進する。 (1)磁壁移動イメージング法の開発とその応用:前年度に計測周波数の向上に成功した、観察試料に振幅変調磁場を印加する手法について、高効率の高周波磁場印加機構をフェライト磁心や平行平板伝送路をベースとして設計試作し、磁壁移動が停止する数 MHz程度までの周波数範囲で、種々のソフト磁性薄膜について磁壁移動イメージングを試みる。
(2)磁化回転過程における局所磁化率イメージング法の開発とその応用:前年度に磁気記録ヘッドにおいて1 GHzまでの磁化回転過程の高周波磁場イメージングに成功した、振幅変調磁場を利用する手法において、局所的な磁化率の解析方法を開発することで、局所磁化率イメージング法を確立する。磁気記録ヘッド以外の磁性薄膜については、高効率の高周波磁場印加機構が必要になるが、項目(1)に示した平行平板伝送路をベースとした高効率の高周波磁場印加機構を開発した後に、種々のソフト磁性薄膜について局所磁化率イメージング法を試みる。
(3) 強磁性共鳴イメージング法の開発とその応用:前年度に試作に成功した導波管進行波アンテナをベースとした高効率の交流磁場印加機構を整備した後に、強磁性共鳴イメージング法を確立し、ソフト磁性薄膜や垂直磁気記録薄膜等に応用する。
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