研究課題/領域番号 |
21H01367
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
石川 靖彦 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60303541)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / ゲルマニウム / バンドエンジニアリング / 直接遷移バンドギャップ / 動作波長制御 |
研究実績の概要 |
単一組成のGe(Ge: 100%)に対して格子ひずみ制御により直接遷移ギャップのウエハ面内制御を実現することを目的に研究を進めている。研究期間内で目標とするバンドギャップの制御範囲は、0.77 eV(初期状態:波長1.61ミクロンに相当)から0.82 eV(1.51ミクロンに相当)とし、光通信のC帯(1.530- 1.565ミクロン)とL帯(1.565-1.625ミクロン)のほとんどをカバーする。Ge選択成長層に対して、「(a) 線幅縮小」と「(b) 外部応力膜の併用」による直接遷移ギャップ拡大を検討している。2022年度は以下の成果が得られた。 (a) 細線幅縮小による直接遷移バンドギャップ拡大 化学気相堆積(CVD)装置を用い、Si上Ge細線構造を選択成長により形成した。線幅は0.9ミクロンから10ミクロンまで変化させた。顕微ラマン測定により細線幅縮小に伴う引張格子ひずみの緩和を観測した。顕微フォトルミネセンス(PL)において、引張ひずみ緩和に伴うバンドギャップ拡大 = 発光ピークの短波長化(1.56ミクロンから1.53ミクロン)を観測し、C帯で光吸収端を制御できることを実証した。今後、Ge細線受光器の受光スペクトルを実測し、動作波長域を明確化する。 (b) 外部応力膜の併用による直接遷移バンドギャップの更なる拡大および縮小 上記のGe細線上にプラズマCVD法によりSiNx層を堆積した。堆積圧力の制御により引張ならびに圧縮応力を内蔵したSiNx膜を形成した。引張応力内蔵SiNxの堆積によりGe細線に圧縮ひずみが導入され、PL発光ピークの位置は約1.51ミクロンまで短波長化した。すなわち当初の予定を達成した。圧縮応力内蔵SiNxではGe細線に引張ひずみが導入され、PL発光ピークは約1.58ミクロンまで長波長化した。今後はSiNxや周辺のSiO2層の膜厚の影響を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた検討を行い、想定通りの結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
Ge細線構造を利用したpin受光器に対して、通信波長帯(主に波長1.460-1.625ミクロンのS-C-L帯)の受光スペクトルを測定し、細線幅縮小に伴う受光スペクトルの短波長シフトを観測する。これまでのフォトルミネセンス発光よりも直接的にGe細線構造の光吸収特性を評価できる。 印加電圧によるスペクトル変化(Franz-Keldysh効果)も明らかにする。また、実用上は0-80°C程度の温度範囲でのデバイス動作が要求される。受光スペクトルの温度依存性を評価し、温度変化によるスペクトルシフトを明らかにする。
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