単一組成のGe(Ge:100%)に対して格子ひずみ制御により直接遷移ギャップのウエハ面内制御を実現することを目的に研究を進めた。研究期間内で目標とするバンドギャップの制御範囲は、0.77 eV(初期状態:波長1.61ミクロンに相当)から0.82 eV(1.51ミクロンに相当)と設定した。光通信のC帯(1.530- 1.565ミクロ ン)とL帯(1.565-1.625ミクロン)のほとんどをカバーできる。前年度までに、化学気相堆積法によるGe選択成長細線に対して「(a)線幅縮小(サブミクロン細線での無ひずみ化)」と「(b)外部応力膜の併用(サブミクロン細線への効率的な応力印加)」を行うことによって、直接遷移ギャップの拡大・縮小をフォトルミネセンス(PL)発光ピーク波長の長短シフト(-60 ~ +30 nm)として観測することに成功した。PL発光の観点では当初目標の波長1.51 ~ 1.61ミクロンを達成した。 2023年度は本研究の手法の有効性を直接的に示すため、サブミクロンGe細線をpin受光器に応用し、受光スペクトルを実測した。細線幅をサブミクロン領域まで縮小することにより受光域が短波長化することを実測した。特に細線幅を約0.5ミクロンまで縮小すると短波長化が顕著となり、C帯での光吸収が抑制された。このことは、電界吸収(Franz-Keldysh)効果に基づくGe光強度変調器においてC帯動作が可能となることを意味する。従来は長波長のL帯に動作が限定されていたが、Ge細線の幅制御というシンプルな手法でC ~ L帯の範囲で動作するGe光変調器を実現可能となった。
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