研究課題/領域番号 |
21H01375
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
知京 豊裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 特命研究員 (10354333)
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研究分担者 |
木野 日織 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主幹研究員 (70282605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイエントロピー合金 / ハイスループット実験 / 第一原理計算 / 原子間ポテンシャル / 結晶構造 / 機能性材料 / 機会学習 |
研究実績の概要 |
この研究提案は最近注目されているハイエントロピー合金を機能性材料として利用するために、データ駆動型材料開発手法(マテリアルズインフォマティクス)とスマート化したハイスループット合成・評価と機械学習など融合させ、機能性材料を探索する試みである。 データ駆動型材料開発では大量の多元系材料のデータが必要になる。本研究では、周期律表からスピンにd電子をもつ元素を選び出しBCC構造とFCC構造をKKR-CPA法で計算を行うことで高速な計算を試みた。d電子系を中心として38元素の組み合わせ(38C4~7.4万通り)でハイエントロピー合金(HEA)合金等比率4元系に対して計算を進め、7万件の計算データを蓄積することができた。 求める特性をもつハイエントロピー合金の発見のためには効率的な計算が必要である。そのためにここでは多目的ベイズ最適化手法を用いて効率的に目的とする材料のデータを蓄積した。 しかし、信頼性のある材料予測のためには、もっと多くのデータが必要であることがわかった。また、ハイエントロピー合金では結晶系を固定しているために、現実的な材料予測にに一部のデータが不適切であることもわかった。 また、ハイスループット実験では、装置や計測機器からのデータを自動的にデータを取集し、材料予測に利活用できるデータを生成するワークフロー、X線回折のスペクトルデータから視覚的に結晶構造のマップを作成きるツールの開発など進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一原理計算手法の一つであるKKR法では結晶構造をFCCとBCCに固定した4元系ハイエントロピー合金の磁性計算した。d電子系を中心として38元素の組み合わせでハイエントロピー合金(HEA)合金等比率4元系に対して計算を進めた。ランダムサイトを実空間で計算するには大きな超格子計算を用いたランダム性の近似を行わねばならない。一方、これを周波数空間で近似するコヒーレントポテンシャル近似(CPA)法を用いると単位格子で計算が可能であり非常に高速な物性評価が可能である。その結果、3カ月で5万件程度のハイエントロピー合金の結晶系と構成元素、磁化に関するデータを蓄積することができた。BCC構造とFCC構造の安定性を議論するには同じ計算パラメタを用いる必要がある。この 計算パラメタは状態密度が十分に小さいエネルギーに設定せねばならないが状態密度は自己無撞着計算後にしか確定しないため計算パラメタを変えつつ自己無撞着計算を行い値を決定する。このパラメタをBCC構造とFCC構造の両方で同じ値を取るように反復計算を行う科学ワークフローを完成している。 この手法を使い、短期間で5万件のデータを自動生成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
材料予測をするためには5万件のデータは不足する。まずはこのデータ数の拡充を進める。特に機会学習を用いた原子間ポテンシャルの適用範囲の拡大と多元系ハイエントロピー合金の結晶データの拡大を進める。 さらにまた、ハイスループット実験でも、実験装置や計測データから利活用できるデータを生成するワークフロー、特にX線回折のスペクトルデータから視覚的に結晶構造のマップを作成きるツールの開発など進める。 機会学習などで予測された結果と実験で得られた結果を比較し、さらに予測精度の高いモデルに構築を目指し、それを磁性だけでなく電気伝導性へも展開する。
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