研究課題
R3年度は、研究実施計画記載項目のうち、以下の3点について検討を行った。(1)機械学習技術により生み出す極小波長依存Si導波路型モード合分波器の開発:研究代表者がこれまで開発を進めてきた独自機械学習技術の波面整合法を用いて、波長依存性を極限まで低減したSi導波路を用いた非対称性方向性結合器(ADC)型モード合分波器を実現した。具体に、通常のADCに対して、その帯域が1.4~2倍となる広帯域ADCの設計を行い、試作により原理確認を果たした。目標では3モードの合分波器を検討する予定であったが、4モードの広帯域合分波に成功した。(2)モード制御技術援用による、高性能、強トレランス波長合波器:従来のマッハツェンダー干渉計(MZI)を2段縦列接続する4波長合波器の構成に対し、2段目の合波器をSi導波路を用いた偏波回転合波器に置き換えることで、2段目のMZIのトレランスを考慮する必要性をなくした、波長間隔20nmのCWDMシステム用、高トレランス4波長合波器を実現した。(3)波長・モード多重伝送融合素子を自在に生み出すための理論設計基盤の構築:研究代表者の独自技術である波面整合法においては、対象となる光回路を細かいピクセルに分割して、各ピクセルに割り当てる材料を最適化していく。このとき、各ピクセルに割り当てる材料を波面整合法では、物理的な理由により決定するが、その最適化の過程で積み重ねられたデータは無駄になってしまう。これらのデータを統計データとして有効活用し、ベイズ推定を用いて、物理ではなく統計的な理由から各ピクセルに材料を割り当てる、まったく新しい機械学習技術による設計法を新規開発した。そのほか、マルチモードの近視野像から、各モードの組成をニューラルネットワークと最適化手法の組み合わせにより推定する手法を開発し、特にノイズの強い画像に対しても大きな効果を発揮することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
極小波長依存モード合分波器、強トレランス波長合波器、新たな理論設計基盤の構築の3項目に関して研究実施計画に沿って研究を進め、所望の結果を得た。また、実施計画には全く記載のなかった、ノイズに強いニューラルネットワークを利用したモード組成推定技術の開発を達成したため、当初の計画以上に進展している、と判断した。
(1)機械学習技術により生み出す極小波長依存Si導波路型モード合分波器の開発:モード分割多重(MDM)、波長分割多重(WDM)の併用の際に問題となる波長依存性を極限まで低減した、Si導波路型モード合分波器を研究する。次年度は特に、製造の際のトレランスを強化した素子の検討を行う。広帯域性と導波路幅の変化に対する耐性を両立するための設計方法を検討し、どこまでの広帯域化が可能であるかを探る。(2)モード制御技術援用による、高性能、強トレランス波長合波器:シリコン導波路を用いる際に問題となる、導波路幅の製造誤差に対する製造トレランスを強化した、マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)型波長合波器の検討を行う。次年度はピーク波長位置の導波路幅依存性を極限まで小さくした、強トレランスMZI波長合波器の検討を行う。具体に、MZIに用いる方向性結合器の広帯域化、それを用いたピーク波長ずれの小さいMZI構造の検討を行う。(3)モード依存損失(利得)、モード間群遅延差を補償するモード交換器、利得等化器:今年度に開発した理論手法を用いて、Si導波路を用いた、モード交換器の検討を行う。具体に、2、3モードのモード交換器を対象として、低損失、広帯域にする方法、サイズの低減方法について検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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