研究課題/領域番号 |
21H01378
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤澤 剛 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (70557660)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | モード分割多重 / 波長分割多重 / 光ファイバ通信 / シリコンフォトニクス |
研究実績の概要 |
R4年度は、研究実施計画記載項目のうち、以下の3点について検討を行った。 (1) 機械学習技術により生み出す極小波長依存Si導波路型モード合分波器の開発: 研究代表者がこれまで開発を進めてきた、独自機械学習技術の波面整合法を用いて、前年度に検討した、Si導波路、非対称性方向性結合器(ADC)型モード合分波器の高性能化を行った。具体に、最適化前の初期構造を単純な直線導波路ADCから、テーパ型ADCに変更することで、帯域、製造トレランスを強化した2モードADCの設計を行い、試作により原理確認を果たした。 (2) モード制御技術援用による、高性能、強トレランス波長合波器: マッハツェンダー干渉計(MZI)内の遅延線導波路について、位相変化の導波路幅依存性をキャンセルするような、条件式を導出し、導波路幅の変化に対し、ピーク波長位置が変化しにくい、強トレランス波長合波器を設計した。高次モードを用いる場合、用いない場合の両方の設計を行い、まずは、高次モードを用いない場合の素子を試作し、導波路幅変化に対する耐性が強いことを実証した。さらに、(1)のモード合波器と(2)の波長合波器を一括集積した、2モード・4波長合波器を実現した。 (3) モード依存損失(利得)、モード間群遅延差を補償するモード交換器、利得等化器: 前年度に構築した、ベイズ推定法に基づく新しい機械学習技術による設計法により、超小型2、3モード交換器の設計を行った。モザイク構造を用いることにより、超小型のモード交換器が構成可能であることを明らかにした。 そのほか、波面整合法に関して、理想出力の位相を考慮することで、より安定に高性能な素子を創出する、新型の波面整合法を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極小波長依存モード合分波器、強トレランス波長合波器、モード交換器の3項目に関して研究実施計画に沿って研究を進め、所望の結果を得た。さらに、実施計画には記載のなかった、2モード・4波長合波器を実現しており、研究計画を前倒しで実現できているため、当初の計画以上に進展している、と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)機械学習技術により生み出す極小波長依存Si導波路型モード合分波器の開発:今年度に検討した、テーパ型モード合波器について、さらなる高次モードの合波が可能なモード合波器の検討を行う。具体に、TE2, TE3モードを励振可能な波面整合法設計、テーパ型モード合波器の検討を行う。 (2)モード制御技術援用による、高性能、強トレランス波長合波器:今年度に試作した波長合波器の結果をフィードバックして、さらに特性を改善した波長合波器の検討を行う。具体に、マッハ・ツェンダー干渉計(MZI)に用いる3dBカプラの高性能化により、回路の損失低減を図り、それを用いることで、より低損失な波長合波器の検討を行う。 (3)モード依存損失(利得)、モード間群遅延差を補償するモード交換器、利得等化器:今年度に検討したモード交換器の、更なる高性能化の検討を行う。具体に、2、3モードのモード交換器を対象として、さらに低損失、広帯域にする方法について検討する。また、今年度に開発した、新型波面整合法を用いて、より高性能なモード制御素子を創出するための検討を行う。 (4) 波長・モード多重伝送融合素子を自在に生み出すための理論設計基盤の構築:昨年度に開発したベイズ推定による設計法と、波面整合法を組み合わせた、新しい機械学習設計技術の検討を行う。データの少ない領域では波面整合法を用い、データが多く集まってきたらベイズ推定を用いた設計法に切り替えることで、最適化の収束を大幅に速める設計法の検討を行う。
|