研究課題
モード多重光ファイバ伝送における最大の技術課題が、光受信器に必要となる巨大MIMO信号処理の実時間回路実現である。この回路規模は、モード多重数の二乗に比例して増大する。本研究の目的は、超大規模MIMO信号処理の実時間実装を実現し、どこまでモード多重数を拡大可能かを明らかにすることである。具体的には、モード多重数ターゲットを6モードとして、6モード多重分割用MIMOをFPGA回路によって実装し、実時間6モード多重伝送を実現する。2021年度は、4モードのMIMOをFPGA実装した。それを用いて、4モード多重QPSK 7,200km結合4コアファイバ伝送実験を行った。世界で初めて大洋横断距離実時間モード多重伝送実験に成功し、トップカンファレンスOFC2021のポストデッドラインペーパーに採録された。またQAM高多値化に対応するために、MIMO以外の信号処理として、超高精度周波数オフセット補償の実時間回路を実現した。それを用いて、4モード16QAM光信号受信の実時間復調実験を行った。送受信器対向構成で全モードで良好な受信特性が得られた。モード多重高多値QAM信号の実時間受信を世界で初めて達成した。以上の様に、4モード多重分離用MIMO実時間回路では十分な性能を達成できたことを受けて、モード多重数の拡張をはかり、6モード多重分離用MIMO回路設計を進めた。Xilinx Virtex UltaraScale+のFPGAボードを用いることで、6モード多重分離用MIMOの実装が可能であることを明らかにした。もう一つのターゲットである、多モードファイバにおけるモード結合の物理解明に対して、モード結合行列の新規測定法を提案した。単一モードファイバにおける偏波回転のストークス測定を参考にして、多モードファイバのモード結合測定に拡張するアイディアである。入力モードを2N-2回変化させながら、ファイバ出力モード状態を計測することで、モード結合行列の測定が可能であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
4モード多重用MIMO信号処理の実装に成功し、世界初の大洋横断距離伝送実験をデモンストレーションできた。また、QPSKだけでなく、世界で初めてモード多重多値QAM光信号の実時間受信にも成功した。以上モード多重数は4モードにとどまっていたものの、本研究のターゲットである6モード用MIMOのFPGA回路設計を進めることができ、それが実現可能である手ごたえを得た。
・6モード用MIMO実時間回路を実装し、それを用いた実時間6モード多重伝送実験を行う。・MIMO以外の信号処理である、搬送波位相再生と周波数オフセット補償についての実時間信号処理回路の高性能化および構成最適化を行う。・結合コアファイバ中のモード分散・モード依存損失を定量的に評価するための測定方法を提案・実証する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Journal of Lightwave Technology
巻: 40 ページ: 1640~1649
10.1109/JLT.2022.3147477
巻: 39 ページ: 6539~6546
10.1109/JLT.2021.3101546