テラヘルツμTASチップの高感度化とサンプルの微量計測を行い、その有用性を評価した。 非線形光学結晶中の光整流を利用して励起レーザーのスポット径サイズで発生する高密度な局所テラへルツ波点光源と、メタアトム(メタマテリアルを構成する基本素子1個)を励起することで、コンパクトで高感度なセンシングが可能なチップ開発を行ってきた。これまでにピコリットルオーダーの溶液をアトモルオーダーの感度で計測できる。 さらなる高感度化と応用利用を意識したチップ構成を目的に反射型計測を検討した。反射型チップでは、メタアトムを励起した際に周囲のメタアトムとの顕著な電界カップリングが起こることをFDTDと実測により確認した。また、透過測定と比較して、メタアトム-サンプル界面の情報を得ることができるため、溶液サンプルの経時的変化に依存しない、より安定した計測が可能であることが分かった。 また、キャピラリー電気泳動法と組み合わせて、混合溶液中の溶質のラベルフリー検出を試みた。その結果、混合溶液中の4種類のカルボン酸を高感度で検出することができた。これより本チップを利用したCE-THz法という新しい計測法を確立した。 微量計測の事例としてDNAと微量血液を取り上げた。DNAの微量計測では、DNA(100μg/ml)の1本鎖と2本鎖の違いを共振周波数のシフト量の違いでラベルフリー識別することができた。血液の微量計測では、1μL未満の採血量で、血中グルコース濃度の食前食後の経時的変化を共振周波数のシフト量で評価することができた。 このような高感度かつラベルフリーセンシングが他の生体関連サンプルでもできる可能性がある。またテラへルツ波を利用したメタマテリアルチップとしては、サイズ、微量性、感度ともにトップレベルの性能であると考えている。以上の結果から、本チップがテラへルツ微量センシングチップとして有用である可能性を示せた。
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