―近赤外光高速波面整形システムによるマウス脳深部への集光技術の開発― 今年度は、昨年度に開発した一次元空間光変調手法を基盤としたサブミリ秒スケールのフィードバックループを持つ高速波面整形システムの開発に取り組んだ。現状、PCIeボード接続のDigitizer、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)およびPCで構成されるフィードバックループを完成させ、10ミリ秒の応答速度を達成している。この現状のシステムの応答速度は、マウス脳深部での集光を達成するために必要な応答速度(~1ミリ秒)には十分に達していない。今後は、フィードバックループ内における各種処理の並列化を行うことで、システム応答速度のさらなる高速化が必要となる。
―マウス脳皮質全体をカバーする広視野イメージング技術の開発 昨年度は,世界最速1D-SLMを基盤とした散乱レンズを開発し,開口数0.5と5mmの視野を同時実現できる散乱レンズを実験的に実証することができた.今年度は、散乱レンズのコンセプトから脱却し、波面補正とカスタム対物レンズの組み合わせによって、開口数0.5と10mmの視野を兼ね備えた広視野イメージング技術を実現する事を目指した。具体的には、光線光学シミュレーションソフトウェアZemaxを用いて、二光子励起用の対物レンズの設計を行った。色収差を二光子蛍光励起効率に影響しない程度に抑えつつ、液晶空間光変調器で補正可能な収差(非点収差、像面湾曲、コマ収差など)を含む3枚構成の対物レンズの設計に成功し、開口数0.5および視野10mmのイメージングが可能である見込みを得た。最終目標であるマウス脳皮質への開発イメージング技術の応用には到達しなかったものの、当初の計画を遥かに上回る性能を有するイメージング技術を開発できる見込みを得ることができた。
|