研究課題
将来の情報記録デバイスには大幅な大容量化・省電力化が求められている。本研究対象とする磁壁移動型レーストラックメモリは、現在の情報ストレージの中枢を担うハードディスクドライブ(HDD)と比較して優れた特長を有する。レーストラックメモリでは電子スピンと磁気スピンとの間の相互作用を利用して磁壁を電子の流れる向きに移動させながら情報の読み書きを行う。磁壁移動速度は電流密度におおよそ比例するが、その効率は物質定数であるスピン偏極率に大きく依存する。一方で、磁性材料のスピン偏極率はトンネル磁気抵抗効果を測定することで見積ることができるが、測定素子の作製にはミリングプロセスが必要である。磁壁移動デバイス材料として有望なアモルファス薄膜は熱に弱く、ミリングプロセスを経ると磁気特性が大きく変化するため、スピン偏極率を見積もるには他の方法を用いる必要がある。本研究では、マイクロマグネティックシミュレーションにより磁壁移動に必要な電流速度を見積もり、実測により磁壁移動に必要な電流密度を測定することでアモルファス膜のスピン偏極率を推定した。アモルファス磁性体としてTbCo薄膜を用い、電流磁界により磁性細線に磁壁を導入後、磁性細線に電流を流して磁壁移動を極Kerr効果により検出した。ガラス基板上に素子を形成したものでは電流印加による熱の影響が大きく、磁壁移動と思われるKerr出力の変化は見られなかったが、熱伝導性の優れたSi基板上に作製した素子では磁壁移動によると推測されるKerr出力の変化が見られた。マイクロマグネティック計算の結果と比較するとTbCo薄膜のスピン偏極率は0.05程度と見積もられた。一般に希土類のアモルファス薄膜のスピン偏極率は低いと言われており、妥当な結果であると推測される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Japanese Journal of Applied Physics
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