研究課題/領域番号 |
21H01402
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
杉山 隆文 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70261865)
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研究分担者 |
松本 浩嗣 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10573660)
高橋 駿人 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 助教 (30861786)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線CT法 |
研究実績の概要 |
コンクリート構造物の建設需要が経済的、社会的、環境側面において多様化する中で、コンクリートに要求される性能が大きく変化している。品質を確保しながら生産性を高めることが共通しているが、その上で過酷環境、長寿命化、環境負荷低減などの条件を満足するコンクリートを実現することが求められている。そして、これらを満足する素材や配合設計の自由度が拡大する中、新しい素材や設計手法の開発において、性能を迅速に評価する手法の研究開発を目的としている。特に、耐凍害性の向上が期待される新素材である中空微小球の導入による気泡構造の可視化や研究期間が長期に及ぶ浸食作用による抵抗性評価のために、X線CT法に代表される放射線の優れた非破壊透視技術を活用した。 気泡構造はASTM法に代表されるリニアトラバース法が採用されるが、多くの労力を要していた。また、電子顕微鏡による断面観察によって中空微小球の分布の様子を観察していた。これら従来法は、いずれも平面観察であり空間分布を捉えることはできていなかった。そこで、X線CT法を用いることで、硬化体への特別な成型過程が不要で客観的な評価判定が可能となることを示した。さらに、直径3㎜で高さが5㎜の微小供試体を用いることで、マイクロメートルオーダーでの分析が可能なCT-XRD連成法を採用することで、コンクリートからのカルシウムイオンの溶出現象を可視化することが可能であることが推察された。 このように、放射線による非破壊透視技術によって、ブラックスボックスである構造体内部を立体的に画像として把握することができて、さらに繰り返し同一供試体の測定が可能であり、測定前の試料準備も不要になることから、評価判定までの生産性を著しく向上することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、コンクリート構造物の建設において要請される品質を確保して生産性を向上することに密接に関係する。すなわち、要求性能を満足する素材や配合設計の迅速な適用を可能とする放射線技術の研究開発である。これまで、新規材料の開発や従来法では長期間を要する耐久性評価に対して放射線技術を活用することによってこれらの研究開発に要する時間を著しく短縮するとともに判定結果の客観性を向上させる新たな研究手法を開発してきた。浸食作用への抵抗性を把握するための適正な試料寸法や実験方法の確立に向けて、時空間を極限まで縮小化し、劣化した硬化体の構造内部をマイクロメートルオーダーで観察しながら、非破壊の特徴を生かした繰り返し観察によって、3次元透視画像による客観性ある評価手法の可能性を示した。また、高強度X線および放射光X線を用いることで、硬化体の特性に応じた評価結果の取得に資することが可能であることが示唆された。 このことから、現在までの進捗は概ね順調と判断した。なお、本研究の推進には放射線装置の適用が必要である。したがって、装置利用法を考慮しながら研究を推進することが必要となる。これまで、大型放射光施設や学内や学外施設の利用が順調に行われている。
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今後の研究の推進方策 |
コンクリート構造物の建設においては品質を確保したうえで生産性を向上することが要請されている。素材の多様化や配合設計の自由度の拡大によって、様々な建設環境や気象環境条件に適応するコンクリートの迅速な実装化が必要である。放射線技術は、新材料や新工法における開発において、的確で迅速な評価が可能となる手法である。構造材料としての硬化コンクリートの新しい性能評価手法の構築に向けて取り組む。長寿命化に資する硬化体の性能評価において、劣化損傷したセメント系硬化体や鉄筋を埋設した硬化体試料を選定してこれらを実験室において作製する。環境側面からの材料開発ではすでにJIS化されているが普及が進まない再生骨材や石炭灰に対して、従来法で示唆されている品質知見を再検証する。これにより短期間での性能評価の可能性を調べる。非破壊透視手法から取得したデジタルデータに基づき硬化体内部構造の可視化に基づく評価において、合理的な判定に資する画像処理について研究する。画像処理においては、供試体寸法を直径3㎜で高さが5㎜程度とする放射光X線測定用、直径50㎜で高さが200㎜程度とするマイクロフォーカスX線測定用とすることで解像度が数ミクロンから数十ミクロンメートルまでとした場合の、有利性を調べる。併せて膨大な画像データとなることから、効率的にデータ処理できる情報化処理について研究に着手する。デジタルエンジニアリングの実現のために、取得データの数値演算処理方法の高度化および効率化のための画像処理方法を引き続き研究する。
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