混和材としての高炉スラグの環境影響を検討するにあたり,鉄鋼産業において製品を転炉鋼,電気炉鋼,高炉スラグ,転炉系スラグ,電気炉系スラグに分割した際の,それぞれの製品のインベントリデータは存在しないことから,昨年度に引き続き,インベントリデータの精査を継続して実施した.その上で,混和材に対しての環境負荷の配分方法を,生産量に応じて配分する重量配分,販売価格に応じて配分するコスト配分とした場合の,高炉スラグ,フライアッシュの環境負荷を再計算し,昨年度結果とほぼ同等であることを確認した.今年度のインベントリデータを使用して,第3版日本版被害算定型影響評価手法を用いた環境影響評価を改めて行い,普通ポルトランドセメント,高炉セメント,フライアッシュセメントのそれぞれに対して,混和材の環境負荷配分を重量配分,コスト配分,配分なしとした場合について,比較検討を行った.その結果,影響領域を地球温暖化,大気汚染,光化学オキシダント,水消費,鉱物・化石資源消費,森林資源消費,廃棄物の7つの領域に区分したとき,地球温暖化,鉱物・化石資源消費,廃棄物が,環境影響評価に対して相対的に高い寄与で影響を及ぼしていることが明らかとなり,環境貢献となる廃棄物(活用)は環境負荷の総和を上回ることが示された.ただし,高炉スラグに対して重量配分で環境負荷を配分した場合の高炉セメントに限り,環境負荷の総和が環境貢献の廃棄物(活用)を上回った.これらの結果は,地球温暖化のCO2排出量のみを環境影響として評価した結果からでは得られない知見であり,環境影響評価をCO2排出量(地球温暖化)を代表とする評価で行うことは,誤った評価結果を与えかねないことを示唆しているものと考えられる.
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