研究課題/領域番号 |
21H01416
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 佑弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10726805)
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研究分担者 |
三浦 泰人 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10718688)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コンクリート / 内部損傷 / 力学性能 / 複合劣化 |
研究実績の概要 |
本研究は,長期の力学作用(疲労,持続荷重)や,材料劣化(凍結融解,アルカリシリカ反応,乾燥収縮など)に伴う体積変/損傷が複合的に生じるコンクリート構造物の力学応答を複数の実験と数値解析手法を組み合わせて分析することを通じて,複合的に損傷が進展するコンクリート構造物の力学性能を予測/評価するスキームを確立することを目的としている. 当該年度は,異なる要因(凍結融解,アルカリシリカ反応)により膨張が生じる試験体を作成し,エックス線CTと,切断面の画像解析を併用して内部の損傷分布を定量化することに取り組むとともに,力学性能試験を実施し,損傷との関連を分析した.凍結融解を作用させた2cm直径の小型試験体のエックス線CT結果等に対して画像解析を実施し,表層のスケーリングと内部のひびわれの寸法分布を自動で抽出することが可能となった.得られたひび割れ情報と,巨視ひび割れ・微視ひび割れを区別した力学モデルによる力学性能解析結果を比較することで,力学性能に支配的な損傷の寸法を導出することに成功した. アルカリシリカ反応による膨張が生じた試験体のひび割れ中に存在する析出物質について,SEM-EDSを用いた化学組成分布とナノインデンテーションを用いた力学特性分布を比較することで,ひび割れ中の析出物質が周囲とイオン交換することで,周囲のセメントペースト部分と同程度の力学特性を保持するように変化することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,異なる要因で体積変化が生じる試験体を作成し,複数の手法で内部の損傷の寸法分布を分析した.その結果,内部の損傷分布のみならず表層のスケーリングについても定量的に示すことに成功し,また解析的手法と比較を行うことで,それら実験で得られた各損傷の力学性能への寄与度を定量的に示すことができた.また,ひび割れ中の化学析出物質の力学特性の分布を測定することで,周囲のセメントペーストと同程度の力学特性を持つことも示された.以上より,当初の計画通り,種々の要因により膨張が生じたコンクリートの内部損傷の寸法分布,ならびに損傷中の析出物質の力学寄与を明らかにできたという点で,おおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,得られた異なる寸法の損傷の力学的寄与のモデルをFEMモデルに実装し,部材の力学性能を評価することに取り組む.提案者がこれまで開発してきた解析システムの構成則を利用し,各損傷パラメータに影響するひずみ量を調整することで,損傷の寸法分布を考慮した力学構成則を提案することが可能であると考えられる.開発した力学構成則は,数多くある既往の種々の部材試験結果を用いることで,効率的に検証を実施することが可能であると考えられる.
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