研究課題/領域番号 |
21H01422
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松島 亘志 筑波大学, システム情報系, 教授 (60251625)
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研究分担者 |
渡邊 保貴 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 主任研究員 (80715186)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粘土 / メゾスケール堆積構造 / マイクロメカニックス / SEM / マイクロx線CT / DEM(個別要素法) / 粒子形状 / 付着力 |
研究実績の概要 |
本研究では,粒子サイズが小さく,観測が困難である一方で,熱化学反応等の材料変化の影響を受けやすい細粒土を対象として,(1)湿潤状態の細粒土のメゾスケール構造を観察する最先端の実験 手法の開発,および(2)大規模粒子ベース数値解析を行い,メゾスケール構造ユニットの力学応答を明らかにすることによって,付着性粒状体としての細粒土のマイクロメカニックスの新たな枠組みを構築することを目的としている.今年度は,以下の研究成果を挙げた. (1)湿潤状態での細粒土の観察手法の確立&DEM解析手法の確立:三軸圧縮試験後の圧縮ベントナイトについて、せん断面およびせん断面から離れた部位の微視構造を高解像度電子顕微鏡FE-SEMを用いて調べた。せん断面では数μm程度の径を有すると考える団粒が密に配列することで滑らかな表面形状を形成していた。せん断面から離れた部位では粗大な団粒と間隙が多かった。せん断を受けることで団粒が崩れながら径が小さくなり間隙を埋め、安定的な構造に収束することが推察された。 (2)非付着性楕円粒子の堆積構造の統計的性質の検討:粘土のような板状の付着性粒子の堆積構造を知る上で,非付着性楕円粒子の堆積構造の知見は重要である.特に楕円粒子は長軸が同じ方向を向いて配向するメゾクラスター構造を形成し,その構造が力学特性に影響を及ぼす.今年度は,2次元DEM解析を元に,このようなクラスター構造の定量化手法を開発し,クラスターサイズ分布についての統一的な知見を得た. (3)任意形状粒子を扱えるLS-DEM解析手法のスーパーコンピュータへの適用:任意形状粒子を扱えるLevel Set DEM解析を本学スーパーコンピュータOakforestで実行し,実際の不規則形状粒状体のせん断挙動を定量的に再現できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘土のメゾ構造の可視化実験に関しては,高解像度のFE-SEMを用いて,水中で凝集した粘土凝集体のメゾスケール構造の可視化を行う手法の検討を行い,分散媒にイオン交換水を用い,薄いメンブレンを通して観察する手法,イオン液体で浸潤される手法など,複数の手法において,ある程度の成果が得られた. 一方,3次元構造の可視化手法であるx線CT解析は,筑波大所有のx線μCT装置(Skyscan 1172HSM)の故障や,放射光施設SPring-8のビームライン確保ができなかったことにより,次年度以降に持ち越しとなった. 数値解析に関しては,2次元のメゾスケール構造解析手法がある程度確立し,現在は3次元の手法の開発に取り組んでいる.本学スーパーコンピュータOakforestの運用が今年度で終了のため,新しいシステムの稼働までは,研究室のワークステーションなどで解析を実施することになる.
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今後の研究の推進方策 |
粘土のメゾ構造の可視化実験に関しては,観察手法についてある程度の目処が立ったことより,次年度は,圧縮履歴のあるベントナイト試料を水中分散させた時の見かけの粒径を調べると共に、条件を変えた供試体に対してもせん断面の観察を行い、変形挙動において安定的に存在しうる団粒の径を検討するなど,より実務に関係する条件での観察を実施する. また,筑波大所有のx線μCT装置(Skyscan 1172HSM)の修理が完了したことにより,次年度以降には3次元の構造解析を試みる予定である. 一方,数値解析に関しては,粘土粒子の板状形状が,メゾスケール構造に及ぼす影響について検討を始める.その解析手法自体はすでに開発済みである.また,これまで2次元で行ってきた凝集解析を3次元に拡張し,そのメゾ構造の定量化手法の開発にも取り組む予定である.
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