研究課題/領域番号 |
21H01428
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松原 仁 琉球大学, 工学部, 准教授 (50414537)
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研究分担者 |
川崎 了 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00304022)
椋木 俊文 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (30423651)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 岩内微生物 / バイオセメンテーション / 自己修復 / ナノX線CT / SDDP地圏材料 |
研究実績の概要 |
脆弱化した岩石の自己組織的な新しい修復技術の構築に向けて,フィールド調査,室内実験,X線画像解析,シミュレーションの観点からの研究を進めており,2021年度の活動は以下のようにまとめることができる。 (1)上期に沖縄本島・離島および北海道にて事前の露頭調査を実施し,詳細調査の対象とする砂岩および凝灰岩露頭を選定した。そして,夏期および冬期には,沖縄本島・離島で選定した露頭の詳細調査を実施し,環境因子(気温,湿度,光量子密度),マクロ強度,鉱物組成(XRD),分子質量数(MS,ICP発光分析),微細構造(SEM),岩内微生物の菌叢構造(NGS)を得た。 (2)セルロース繊維材としてバイオ炭(炭化木材,炭化バガス)を選定し,地盤固化を可能とするSporosarcina pasteuriiの活性化実験を実施した。結果として,改良の余地は多く残されているものの,活性化できる可能性を見出した。また,微弱電流の添加については,通電のみでも脆弱化した岩石を修復できる可能性を見出した。微生物なしの予備実験を実施したところ,多孔質岩の空隙部に炭酸塩が析出し,岩石の強度を高めることが明らかとなった。 (3)硅砂5号をSporosarcina pasteuriiおよび沖縄県内から採取した尿素分解菌を使って固化させた供試体を製作しした。そして,ナノX線CTスキャナーで撮影することにより,砂粒子と炭酸カルシウムの3次元構造を個別に得ることに成功した。 (4)MICP(microbially induced carbonate precipitation)のプロセスにおいて,微生物代謝および挙動,炭酸塩の析出,土粒子・間隙水の電場を考慮したマルチフィジックス・マルチスケール解析法を構築した。シミュレーションにて得られた炭酸塩の析出パターンは実験値に酷似し,析出量も実験と同等の値となることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
詳細調査の対象となるサイトを沖縄および北海道地方の両方で選定することができ,特に,沖縄地方においては詳細調査も計画通りに進んでいる(北海道の詳細調査は2022年度に実施)。また,室内実験,ナノCT画像解析およびシミュレーション技術の開発についても順調に進み,一連の研究成果が蓄積されている。また,研究開始時に設定した学術的問い(1. 岩石種,気温・湿度などの環境因子と最適微生物相とはどのような関係にあるか,2. 岩内微生物による岩石脆弱部の選択・集中的な修復をどのように実現するか,3. 岩石の修復ダイナミクスに伴うナノ空間構造の変化とマクロ強度発現との関連性はどのようなものか,また,それをどう評価するか,4. ナノ空間における微生物鉱化とマクロ領域における岩石の力学特性の変化をどのように結びつけ,評価するか)に対しても,特に,2と4については解の見通しを得ている。 以上のことから,本研究はおおむね順調に進んでいると考えている
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進捗しており,当初の計画書に沿って研究を進める予定である。ただし,フィールド調査については,北海道地方を中心とした調査に力を入れ,フィールド調査と実験,CT画像解析にて得られた各種データをシミュレーションに適用する具体的な方法論の確立を視野に入れて検討していく。
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