研究課題/領域番号 |
21H01445
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
八木 宏 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (80201820)
|
研究分担者 |
宇田川 徹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 主任研究員 (00443391)
大橋 正臣 東海大学, 生物学部, 准教授 (70724988)
梶原 瑠美子 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 研究員 (40702014)
稲葉 信晴 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 研究員 (20896253)
伊藤 真奈 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 研究員 (60735900)
中村 隆志 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20513641)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 細菌群集 / 底質 / 海岸環境指標 / バイオセンシング / 広帯域 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、海岸・沿岸域における底質細菌群集の地域性、空間構造、時間変動性を把握のための現地調査を継続するとともに、細菌群集組成の特徴やその機能に関する解析を進めた。 房総・鹿島灘沿岸では、令和3年度に引き続き、調査船たか丸による調査(水深10m帯、30m帯、5月・7月・12月)と港湾・空港技術研究所観測桟橋(HORS)における浅海域調査(水深5m以浅、9月、12月)を実施し、底質細菌群集組成の水深帯による変化及び南北方向変化の把握を目指した。一方、北海道沿岸では、北海道太平洋側約300kmにわたる海岸域(夏季)、日本海側の海岸・漁港周辺域(夏、冬季)を対象として、細菌群集組成と化学環境項目の関係性やそれらの空間的および季節的な変化の特徴を把握するための調査を令和3年度より調査地点数を増やして実施した。 以上の調査で得られた各地点の底質からDNAを抽出し、次世代シーケンスを用いて16SrRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシーケンス解析を実施した。細菌群集の多様性は、海岸や漁港などの利用形態による明確な違いは確認されなかったものの、海域区分(鹿島灘および九十九里)ごとに見てみると経年的に多様性が低くなっている傾向が認められた。北海道における細菌群集構造の類似度は、調査地点間に比べて採取年間(2021年および2022年)で高く、細菌群集構造が地域や地点の特性を反映していると示唆された。また、古平漁港の底泥を用いた炭素資化試験(現地水温)では、N-Acetyl-D-GlucosamineやGlycogenといった糖類、糖アルコールのD-Mannitol、界面活性剤であるTween40や80、そして、アミノ酸では特にL-Serineを中心に活発な代謝が認められ、底泥中の有機物の集積が比較的小さかった漁港中央の地点において炭素源資化における多様性が最も高いことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
底質細菌群集の海岸環境指標としての可能性を探る本研究においては、細菌群集の地域性、空間構造、時間変動性を化学的環境項目との関係性と併せて把握するための現地底質試料の採取が最も重要である。令和3年度に引き続き、令和4年度も対象海域(房総・鹿島灘沿岸、北海道沿岸)における底質採取、環境調査が順調に実施され、解析データの集積が進展した。また、各調査点における底質試料のDNA分析結果から細菌群集組成の海域間・水域間の違いや多様性の経年的な減少傾向等を示すことができたことから本研究は概ね順調に進んでいると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度、令和4年度の2年間で、対象海域(房総・鹿島灘沿岸、北海道沿岸)における底質試料のサンプリングが進み、底質細菌群集については、地域性、空間構造、時間変動性の基本的な特徴が把握されつつある。最終年度となる令和5年度は、底質細菌群集の特徴を最終的に評価するために必要なものに絞って現地調査を実施する。また、底質細菌群集の環境指標として可能性を明らかにするためには、細菌群種組成と環境項目との関係性の把握が重要である。そこで、底質細菌群集組成と底質の物理化学組成(粒度組成、有機物含量、安定同位体比など)や利用形態(海岸、漁港、河口など)、水深などの環境因子との関係性を細菌数(DNA量ベース)データも加えて解析することで、細菌の量的な知見も組み込んだ細菌群集DNA解析の海岸・沿岸域におけるバイオセンシングとしての可能性を明らかにする。
|