研究課題/領域番号 |
21H01446
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
内田 賢悦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90322833)
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研究分担者 |
宗廣 一徳 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (00414194)
加藤 哲平 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10827116)
杉浦 聡志 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30648051)
四辻 裕文 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 研究員 (40625026)
峪 龍一 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80908426)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自動運転 / 時間信頼性 / ネットワークデザイン |
研究実績の概要 |
今年度は、自動運転社会での戦略的ネットワークデザインを念頭に置き、自動運転車両が道路ネットワークに与える影響を定量的に評価するための技術、すなわち、コネクティッドな自動運転車両の特性を踏まえた交通解析法の開発を行った。 開発した解析法は、ヒトが運転する一般車両とコネクティッドな自動運転車両が混在する道路ネットワークを対象としており、そこではそれぞれの車両が異なる経路選択行動をとると考えている。ヒトが運転する車両は、精度の高い道路ネットワーク上の交通状況を得ることが困難であると考えられるため、その経路選択行動を確率的利用者均衡配分問題として表現している。一方で、コネクティッドな自動運転車両は、精度の高い道路ネットワーク上の交通状況を得ることが可能であると考えられるため、その経路選択行動を確定的利用者均衡配分問題として表現している。ここで、確率的利用者均衡配分問題は不完全情報下の経路選択を表現するのに対して、確定的利用者均衡配分問題は完全情報下の経路選択を表現している。 また、ヒトが運転する車両とコネクティッドな自動運転車両は、異なる車頭時間を有して走行すると考えられ、さらに車種ごとの車頭時間にはばらつきがあることが想定される。そのため、車種別の車頭時間分布を設定することによって、確率的な交通容量を表現した。このことにより、リンク上の自動運転車両の比率によって、異なる分布形状をとる確率的なリンク交通容量を表現することができた。経路選択の異質性と確率的交通容量の影響を表現したマルチユーザクラス均衡配分問題として、交通解析法の定式化を行った。この解析法では、交通量だけではなく移動時間も確率変数として計算されるため、時間信頼性の視点から、自動運転車両が道路ネットワークに与える影響の定量的評価が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の主要な開発目標として、自動運転車両が道路ネットワークに与える影響を定量的に評価するための技術、すなわち、コネクティッドな自動運転車両の特性を踏まえた交通解析法の開発を挙げていた。開発した技術については、その成果を国際学会で発表するとともに、国際ジャーナルにも投稿しており、現在査読中となっている。開発する技術の要件として、ヒトが運転する車両とコネクティッドな自動運転車両における経路選択と車頭時間の違いを精緻な数学モデルとして表現することを挙げていたが、それら具備したマルチユーザクラス均衡配分問題として、交通解析法の定式化を行うことができたと考えられる。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に開発した交通解析法を活用し、ヒトが運転する車両とコネクティッドな自動運転車両が混在する道路ネットワークにおける適切な交通運用方法の検討を行う。完全な自動運転車社会が到来するまでは、長い時間を要すると考えられるため、その間どのような交通運用をとると道路ネットワークが効率的となるかを考えることは喫緊の課題であると認識している。 今年度の研究成果の1つとして、道路ネットワーク内に自動運転車専用レーンをどのように配置すれば最も効率的な道路ネットワークの交通状態が達成できるかを検討した研究がある。自動運転専用レーンを設置した道路リンクにおいては、ヒトが運転する車両とコネクティッドな自動運転車両が混在することになり、安全性の面で問題が生じる可能性があり、運用面での課題が残されていた。そのため、道路ネットワーク内に自動運転車両専用リンクを配置する方がより安全性の面で実現可能性の高い施策となると考えられる。しかしながら、人が運転する一般車両は自動運転車両専用リンクを通過できないため、その配置によっては、目的地に到達できない場合が考えられる。これに対して、自動運転車両専用レーンの配置を考える際には、このような問題は生じない。したがって、自動運転車両専用リンクの最適配置問題は、自動運転車両専用レーン配置問題と比較して、より解くことが困難な問題として位置づけられる。 今後はこうした自動運転車両専用リンク配置問題をネットワークデザイン問題として定式化するとともに、その解法アルゴリズムの開発も行う。上述した問題の困難性を克服するために、離散変数による最適化問題として定式化される自動運転車両専用レーン配置問題を連続緩和した問題として自動運転車両専用リンク配置問題を再定式化して解くことを考える。また、マルチユーザクラス均衡配分問題に対する感度分析を活用した効率的な解法の開発を行うことを考える。
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