研究実績の概要 |
本研究の目的は,大都市における(A)公共交通,(B)道路交通,(C)クラウド型物流(CSD: Crowdsourced Delivery)システムに対して,混雑問題を解消する/運用効率を高める市場型マッチング・システムの導入を提案し,その市場メカニズムのデザイン及びシステム評価の方法論を開発することである. より具体的には,まず,時空間を指定した交通サービスの利用/提供権を取引できる市場の創設を提案した.その上で,(A)~(C) の各交通システムに対して,(1) 交通サービス利用/提供権を効率的に配分(i.e.,与えられた施設容量・取引可能サービス量の制約下で,個々の交通サービス利用/供給者の選好情報を反映した社会的余剰を最大化)する市場メカニズム(i.e., サービスの価格・需給マッチングを決定する取引ルール)及びその実装法(i.e.,現実的な大規模問題での効率的アルゴリズム)を開発した.また,(2) 提案市場の有無に応じた各種状態を表現するモデルの解析によって状態間の理論的関係を明らかにし,市場導入効果を定量的に評価するための理論的枠組を構築した.ここで,各交通システム(A)~(C)の「一般モデル」の設定は,以下の通りである:(A)鉄道網において,列車待ち行列を考慮した上で,利用者が出発/到着時刻と乗車列車を選択する動的鉄道配分モデル;(B) コリドー型道路網において,利用者が出発時刻を選択する動的交通配分モデル;(C)配送タスク需要/供給の価格弾力性を考慮し,配送タスクを請け負う権利が市場化された状況での需給マッチング・モデル.さらに,各システムに対して開発された理論的枠組が,(B)と(C)を統合的に考えたシステム(i.e., 道路混雑を考慮した MS+CSDシステム)に拡張できることを明らかにした.
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