研究実績の概要 |
本研究が提案する協調促進トークンメカニズムについて,静的な均衡状態における理論的精緻化を行うことにより,金銭的支払いを必要とせずに,最適割当(利用権オークション)と比較して80-90%の効率性を達成できることを示した.これは同じく金銭的支払いを必要としない早い者勝ち (First in first come) の効率性と比較すると大幅な改善となっており,トークンの再配布タイミングというartificial paymentによって,利用者の自己選択メカニズムが働き,効率性が改善されることを示した. 一方で,供給者(トークン再配布タイミング決定者)にとっては,利用者の選択行動は観測できるが,そこから得られる効用を直接観測できるわけではない.そのため,その状況下において,再配布タイミングを決定することが難しいと考えられる.そこで,供給者が利用者の効用を観測できないという現実的な設定下において,動学的なモデル化を行った.利用者・供給者ともに観測できるのは前日の各スロットの総利用者のみとして,利用者の学習モデル,供給者の学習モデルをそれぞれ構築し,利用者は自身にとって望ましい選択を確率的に行う一方で,供給者はday-to-dayでの再配布タイミングの決定問題を解くという動学モデルを構築した.まず,再配布タイミングが固定されている時の利用者動学を考えると,静学的な均衡と同じ社会的厚生レベルはたかだか4, 5日(4, 5回の試行)で達成できることを明らかにした.これは協調促進トークンメカニズムの学習には利用者にとって大きな期間を必要としないことを意味している.次に,利用者も学習を行う設定下において,供給者も最適な再配布タイミングの学習を行うモデルでは,8-13日程度で動学的均衡に達成することが明らかになった.そのため,1-2週間で協調促進トークンメカニズムが機能することを示した.
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