研究課題/領域番号 |
21H01455
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
塚井 誠人 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (70304409)
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研究分担者 |
奥村 誠 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00194514)
山口 裕通 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (10786031)
圓山 琢也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (20361529)
田中 貴宏 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (30379490)
原 祐輔 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50647683)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エシェロン解析 / コサイン類似度 / データフュージョン / ラムゼイ均衡ネットワークモデル / Simulated Annealing |
研究実績の概要 |
令和4年度は,人流集積モデルの開発,人流ビッグデータとPTデータの統合手法の開発,ならびに空港アクセス交通手段モデルの開発を中心として研究を行った.人流集積モデルに関しては,令和3年度に開発した人流集積地点の内生的抽出手法であるエシェロン解析と空間的な施設配置特性をあらわす地理データの対応をコサイン類似度を用いて分析する手法を開発した.この分析によってコロナ前の2019年以降の毎年5月の施設別集客を詳細に明らかにすることができた.同手法は英文ジャーナルへの投稿準備を進めている.人流ビッグデータと既存トリップチェーンデータのフュージョン手法の開発に関して,前者の例として携帯電話位置情報から得た時間帯別地点別の滞在人口データを周辺分布として扱い,後者の例としてPTデータやGPSに着目してこれらをトリップチェーン単位の同時分布データとして扱うこととして,後者の時空間フォーマットを前者に合わせる形での回帰分析を行う手法を開発した.こちらは経過を土木学会中国支部に投稿している.最後のテーマに関しては,須ヶ間・奥村が開発したラムゼイ価格による空港アクセス交通手段モデルを素材として,計算量の制限から解析的な求解が可能なネットワークサイズに関する限界を突破するために,Simulated Annealingによる近似解法の開発を行う.こちらは最終年度である令和5年度上旬の開発を目指している.さらに並行して実施した都市間業務交通に関する実態調査の結果は,コロナ前後を含めて3回実施しており,途中経過を学会投稿している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
設定した3課題のうち,都市内の人流実態をビッグデータから抽出する統計モデルに関しては,当初の予定通り開発を行い,実証的に有意な結果が得られることを示した.人流ビッグデータとPTデータの統合手法に関しては,令和4年度で基礎的な手法開発を終了している.今後は,既存トリップチェーンデータを説明変数として用いる際のデータクローニング手法を追加開発して,昨年までに開発した手法と組み合わせる.空港アクセス交通手段モデルは,交通ネットワークの建設・維持管理を含む路線の維持費用を各ルート別に負担するのではなく,ネットワーク全体としてプールしてファイナンスする点に特徴のある整数計画法モデルである.同モデルを整数計画法として解析的に求解する手法は須ヶ間・奥村らがすでに提案しているが,取り扱えるネットワークの規模に限界がある.本研究では実用的な規模で計算を行うため,Simulated Annealingによる近似解法の開発を行って,検討中の空港アクセス鉄道の路線位置別の採算性を比較する.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,人流ビッグデータとPTデータの統合手法に関して,周辺分布としてのモバイル空間分析への回帰モデルの推定を繰り返しながら,説明変数として用いるトリップチェーンデータの時空間類似度とモデル適合度の関係を分析可能な手法の開発を進める.これにより,コロナ後の交通需要の回復に関して,都市圏単位で評価を行う.また都市来訪者に関する旅客需要に関しては,既に実施したWeb調査に基づいて今後の回復動向を明らかにする.またその際に,インバウンド旅客需要について推計する方法も検討する.これらのデータ分析に基づいて,空港アクセス交通手段モデルへの入力データを調えて,旅客回復動向別の路線計画の頑健性を明らかにする.以上を取りまとめて,関連する研究者ならびに実務者と研究成果を共有する発表会を開催する.
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