研究実績の概要 |
生理活性物質であるエンドトキシン(ET)は、医療現場で用いる水道水(医療用水)から可能なかぎり除去することが望ましい。本研究は、浄水処理プロセスによ りETおよび主たるET産生菌をできるだけ低減するための方策を提示することを目的としている。本年度は、国内の膜ろ過処理を有する2浄水場を対象として、排水処理を含む各プロセスにおける、ET活性およびET産生菌の存在状況や挙動の調査を行った。 当該の浄水場では、いずれも伏流水を原水として、2段階の精密膜ろ過により回収率99.9%を達成としている。原水のET活性値は0.3-0.4[EU/mL]であったものの、膜ろ過1段目の濃縮液(すなわち膜ろ過2段目の原水)は5.8-9.0[EU/mL]となった。さらに、1段目および2段目の膜ろ過水を混合した浄水のET活性値は2.0-2.8[EU/mL]となり、もとの伏流水よりも上昇した。一方、膜ろ過2段目の濃縮液である膜ろ過排水中のET活性値は67-377[EU/mL]であった。各プロセスの流量からETのマスフローを計算すると、膜ろ過処理の過程で大幅にETが増加しており、細菌の増殖による可能性が考えられた。 膜ろ過排水中の単離菌を対象に16S rRNA遺伝子を標的とした遺伝子解析では、12属(Acidovorax, Brevundimonas, Caulobacter, Flavobacterium, Methylibium, Mycolicibacterium, Polaromonas, Pelomonas, Pseudomonas, Sphingomonas, Stutzerimonas, Undibacterium) が同定された。そのうち、ET産生能力が比較的高い細菌はPelomonas, Pseudomonas, Undibacterium であった。
|