研究課題/領域番号 |
21H01492
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山中 俊夫 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80182575)
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研究分担者 |
崔 ナレ 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10826481)
小林 知広 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90580952)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 呼吸域吸気型置換換気 / 診療室 / 局所排気フード / 全面床吹き出し空調 |
研究実績の概要 |
本研究は、感染リスクを予測するモデルであるWells-Riley感染確率モデルを基礎として、事務室や病院の診察室において、感染者から発生する飛沫核により、周辺の在室者や医師が感染することのないよう、室内気流の制御による感染体側手法を確立するとともに、時系列の応答関数を用いてウイルスの不活化や沈降などの影響を考慮した感染モデルを開発することを目的としている。 これまでの研究では、事務室を対象として置換換気に呼吸域給気を加えた新しい呼吸域吸気型置換換気と、診察室を対象として、フランジ形フードと床染み出し空調の組み合わせによる飛沫核の挙動を制御し、感染リスクの低減が可能がどうかについて、実験とCFDにより、検討を行い、呼吸域給気併用型置換換気システムの有効性と、フランジ形フードと床染み出し空調を組み合わせる場合の諸条件と感染リスクとの関係を明らかにすることができた。 事務室での呼吸域給気併用型置換換気システムでは、CFD 解析により、呼吸域給気併用置換換気の性能を詳細に検討した。呼吸域給気を呼吸高さより少し低い高さの室温と同じ温度で、呼吸高さから給気すると効果的であった。また、呼吸域給気量の割合が大きいと発熱源からの上昇気流が効率的に発生することが示唆された。 診察室でのフランジ形フードと床染み出し空調の組み合わせシステムでは、換気回数が小さい場合は、一般排気口の影響が小さくなり、フード単体の捕集性能は良くなるのに対し、換気回数が大きい場合は、フードから漏れたガスも拡散することなく、天井の排気口で排気されており、感染症対としては、換気回数の効果の方が大きいことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
事務室を対象として置換換気に呼吸域給気を加えた新しい呼吸域吸気型置換換気について、実大の実験装置を作成し、4人が在室する事務室において、感染者の発話や呼吸により発生した飛沫核による他の在室者の暴露飛沫核濃度を定量化し、呼吸域給気温度、床面ディフューザーと呼吸域給気量の比率が室内飛沫核濃度分布に及ぼす影響を明らかにすることができた。 また、病院の診察室を対象として、実大実験室実験を行い、フランジ形フードと床染み出し空調の組み合わせ条件下における発話による飛沫核濃度分布を定量化し、感染リスクの低減が可能であることを明らかにした。 さらに、呼吸域吸気型置換換気、局所排気フードと床染み出し空調の組み合わせシステム化での様々なパラメータの検討のための室内気流解析を標準k-εを用いて行い、実験の精度を明らかにするとともに、実験では行えていない条件(診察室での咳発生等)での検討も進めることができたことから、研究は当初の計画以上に進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、会話や咳発生による飛沫核の拡散と室内各点での濃度応答を計測・CFD解析し、応答関数を明らかにするとともに、飛沫核に含まれるウイルスの不活化を考慮することにより、実際の室内空間における在室者の感染リスク評価を行う。応答関数の同定は、咳マシンを用いた模擬飛沫核の飛沫核濃度をパーティクルカウンターで測定することにより求めるが、咳マシンでの発生飛沫核の総量を求めるために、完全混合室での飛沫核濃度測定を行う。 事務室の呼吸域吸気型置換換気システムについては、設計用データの収集のため、より広いパラメータ範囲のものでの室内濃度分布の予測をCFD解析を用いて行う。 診察室の局所排気フードと床染み出し空調の組み合わせシステムでは、全般換気システムとして、一般換気システムでの実験とCFD解析を行う。
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