研究課題/領域番号 |
21H01497
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
大塚 雅之 関東学院大学, 建築・環境学部, 教授 (20288088)
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研究分担者 |
光永 威彦 明治大学, 理工学部, 専任講師 (20882822)
山口 温 関東学院大学, 建築・環境学部, 准教授 (40276621)
遠藤 智行 関東学院大学, 建築・環境学部, 教授 (90385534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トイレ空間 / 水・空の衛生環境 / 感染症 / COVID-19 / 温熱環境・省エネルギー / 汚染拡散 / 洗浄時飛沫 / 手指洗浄 |
研究実績の概要 |
非住宅のトイレ空間において、水環境及び空気環境を衛生的かつ良好に保つための給排水衛生設備、換気・空調設備の計画・維持管理に関するガイドラインを提案することを目的とする。特に①大便器・小便器の飛沫等の抑制方法、②洗面器等に設置する節水形水栓による手指洗い手法と除菌効果、②節水形大便器の排水横管での汚物の円滑な搬送排除、③温熱環境、省エネに配慮した熱環境計画、④排水通気設備(排水トラップ)からの感染防止について、水環境・空気・熱環境を考慮し総合的視点から検討した。 本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。(1)トイレ空間における感染症防止等の衛生性・安全性確保の留意点を、水・空気環境に加えて温熱環境と省エネ配慮の視点から既往文献を調査し研究目的を明らかにした。(2)衛生器具に関して、主に大便器における糞口感染のリスク回避を目的に洗浄時の飛沫拡散の影響を定量的に把握し解析した。(3)接触感染回避を目的とした手指洗いの除菌効果を、各種節水形水栓を用いて被験者実験を行い、建築設備的な視点も加え明らかにした。(4)排水通気系統からのウイルス等の侵入防止のため、排水横管内での汚物等の停滞と詰まりによるトラブル防止に向けた搬送性能のシミュレーション手法を検討した。また、ウイルスの室内への侵入防止のためトラップの破封現象(蒸発現象等)の解明を目的に、外界条件変化に伴う蒸発量の実測等を行った。(5)トイレブース内における汚染拡散の状況をCFD解析により明らかにし、換気口の位置の違いなどによる汚染物質の滞留状況の差異などを推定した。(6)災害時に避難所となる学校トイレ空間での温熱環境の実測調査を行い、温冷感と省エネ性について基礎的データの収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)トイレ空間における感染症防止等の衛生性・安全性確保に向けた既往研究論文等を担当分野別に調査し、課題点と本研究の位置づけを明らかにした。(2)国内外の各種大便器について飛沫拡散の測定を行い実態を把握した。特に大便器の洗浄方法、器具排水特性、洗浄水量などと飛沫発生の要因との関係について考察した。(3)自動水栓を用いた手指洗浄による除菌効果について、細菌の除菌という衛生工学的視点と節水化という給排水設備的な両方の視点から明らかにし、評価方法の基礎を構築した。(4)排水横管での汚物搬送性能については、実在の配管形態での停滞・詰まりの予測手法を提案し、実測値との誤差発生の要因について考察するまでに至った。また、トラップについて、実験装置の製作を行い,トラップ封水の蒸発現象予測に関する予備実験として,単正弦波印加時の蒸発量に測定した。その結果,封水振動時に蒸発量が増加傾向にあることを確認した。加えて,わん・P・Sトラップの蒸発量を比較し,わんトラップの蒸発量が大きい傾向を再確認した。(5)空気環境については、トイレ個室における実測結果を参考にCFDによる解析モデルを構築し、排気口位置の異なる個室内における空気齢分布・空気余命分布・咳による飛沫の挙動について解析した。(6)温熱・省エネに関しては大学施設内の5か所のトイレ空間を対象に、その空間構成と年間の温熱環境を把握した。そのうち、クール・ヒートチューブを介した給気方式を採用するトイレ空間において、夏期、冬期に環境評価実験を実施し、第3種機械換気を採用するトイレ空間と比較した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)既往文献については、概要と課題点を明確にしレビュー論文として纏める。(2)大便器飛沫の拡散については、実態は把握できたので具体的な評価試験法として提案する。(3)水栓による手指洗浄の除菌効果を、自動水栓に引き続き一般水栓でも実施し実使用と合わせて除菌効果の高い、洗浄条件、節水化手法等について考察を深める。(4)横管の汚物搬送では、汚物の停滞要因についてCFD等も加えながら詳細に考察し、配管設計支援ツールとしての精度を高める。トラップの破封防止について、実験装置の改善を実施した上で,封水を単正弦波により振動させる「封水振動蒸発実験」と,振動させない「封水静止蒸発実験」を同一条件下で実施する。その実験結果を用いて,封水振動時の蒸発量の傾向分析および,現在提案されている蒸発量の予測式の精度検証を行う。加えて,床排水に使用されるわんトラップの蒸発量が多いことから,その緩和もしくは破封防止策について検討する。(5)トイレブースの空気環境の改善について、モデル空間を拡張し、小便器も含めたトイレ空間全体の解析を実施する。特に、上部で空間が連続している複数の個室空間、窓開けを併用し外気の影響を受けるトイレ空間における汚染物質の拡散挙動・適切な給排気口の設置位置・風量について検討する。(6)トイレ空間の温熱環境と省エネ改善について、前年度に測定したトイレ空間に加え、築年数が経過したトイレを加えて温熱環境実測、環境評価実験を実施する。空間構成、築年数等が環境評価に与える影響を検討する。また、トイレ空間調査からモデルを作成し、シミュレーションにより温度推移、省エネルギー性能を検討する。 ・
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