研究課題/領域番号 |
21H01516
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤田 康仁 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (00436718)
|
研究分担者 |
山中 浩明 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00212291)
高橋 宏樹 ものつくり大学, 技能工芸学部, 教授 (60226876)
守田 正志 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90532820)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | カフカース / キリスト教 / 中世 / 岩窟 / 修道院 / 文化財保存 |
研究実績の概要 |
◯本研究課題の初年度の取り組みとして、ふたつの研究対象地域のうち、アルメニア共和国における中世岩窟遺構について実地調査を行うとともに、現地研究協力者との研究打ち合わせを実施した。なお、新型コロナウィルス感染症の拡大により、当初予定していた2021年度での調査の実施は実現できず、2022年度へ繰り越しての調査となった。 ◯具体的には、主な調査対象であるゲガルド修道院における岩窟遺構について、2022年10月及び2023年3月にそれぞれ調査を実施した。同国における岩窟遺構の類例に関する調査については、隣国との軍事的緊張等により調査を見合わせるに至った遺構もあったが、現地での情報収集で新たに存在を確認できたものも含めて複数の遺構にて調査を行った。各遺構では、写真やビデオによる現況の記録のほか、レーザースキャナによる点群実測データを得るとともに、特にゲガルドでは、リーブ硬度計を用いた材料強度計測の試験的運用も行うなど、遺構の分析に必要な基礎的データの入手に努めた。 ◯上述の調査データに基づき、ゲガルドの遺構のうち、特に下階の礼拝室と上階のガヴィット(集会施設)について、石材を用いた一般的な構法による建築との比較を通じてその建築的特質を分析し、知悉された建築形態を援用しながら、岩窟を掘削して作る構法的利点を活かした形状の形成が行われている点を明らかにした。 ◯調査に際しては、アルメニア共和国文化省及びアルメニア使徒教会(エチミアジン)の協力を得た。エチミアジンでは同組織の現地研究協力者からの依頼を受け、修復中のカトギケ聖堂(世界遺産)の実測を行い、情報提供を行うとともに、研究協力体制の継続を確認した。なお、上記の調査成果の一部は、2022年度日本建築学会関東支部研究報告集等において報告されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属機関におけるコロナ禍の影響による海外渡航の制限等から、研究の推進にかかせない実地調査の遂行が、2021年度及び2022年度前半には叶わなかった影響により、調査の進捗自体は予定より遅れている現状にはある。ただ、海外渡航解禁後の2022年度後半に実現した2度に亘るアルメニア調査を通じて多くのデータを入手できた点、調査データに基づいた建築的特質の分析をある程度進められた点で、一定の進捗があったものと認識している。また、実地調査を通じて対象遺構の損傷状況の実際を把握したこと、採択時には認知していなかった関連遺構の存在を把握し調査したこと、現地研究者との緊密な情報交換や最新の政情など実地調査に必要な各種情報の把握などを通じて、本研究課題の推進に新たな示唆を得た点でも成果があった。
|
今後の研究の推進方策 |
◯調査については、昨年度に引き続き、もうひとつの対象国であるジョージアにおける遺構を中心に、分析に必要なデータの採取を実地調査を通じて実施し、データと分析の拡充を図るものとする。また、必要に応じてアルメニア共和国における補足調査も行う。調査遂行に当たっては、アルメニア・ジョージア両国の現地研究協力者との情報交換を密にし、未把握遺構の追加も考慮しながら、各遺構の十全な分析データの収集に努める。
◯研究については、これまでの分析手法を継続して、調査データに基づく対象遺構の現況把握に注力するとともに、形状の類似性から比較対象となる建築物の類例との照合を通じて、岩窟を利用した遺構の特質を明らかにするものとする。遺構の建築材料及び地質に関する分析については、現場での強度測定に加えて、成分分析や掘削表面の精査などの分析手法の展開も念頭に作業を行う。
|