本研究の目的は、研究代表者として行った宇宙実験「Group Combustion」から得られた群燃焼発現限界に関わる「問い」においてキーとなる「冷炎」に注目し、これまで熱炎にのみ注目して捉えられてきた液滴間燃え広がりに冷炎を考慮することで、燃え広がりの定義の拡張を行うことである。 令和5年度には、山口大学の0.9s落下実験施設における微小重力実験により、等間隔デカン液滴列および径違い液滴間の燃え広がりにおける冷炎発生の確認を、中赤外カメラを用いた燃焼生成物による中赤外発光分布計測によって行った。その結果、これまで大気圧においては、冷炎のみが発生するモードが観察されていたが、新たに冷炎の発生後熱炎に移行するモードの存在も明らかとなった。 以上と並行して、予蒸発を考慮したランダム分散液滴群の燃え広がりを記述するパーコレーション計算コードの開発を行った。燃え広がり限界に加えて予蒸発限界を導入し、予蒸発により形成された予混合気層を計算に考慮した。その結果、予蒸発を考慮することにより、群燃焼発現限界が大きく拡大することが明らかとなった。また、予蒸発干渉により群燃焼発現限界がさらに拡大する可能性が示唆された。ただし、計算により得られた群燃焼発現限界は宇宙実験「Group Combustion」で得られた値よりは小さい値となった。 また、適用対象燃料の拡大を目的に、室温大気圧において気体である燃料を加圧液化することで高圧での液滴燃焼実験を行う可能性の検討を行った。その結果、そのような燃料においても高圧・微小重力場において液滴燃焼を行うことができた。ただし,燃料供給時の再現性に課題が残された。
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