研究課題
宇宙推進分野に於いてハイブリッドロケット推進は長年、次世代推進機関として注目を集めてきた。しかし、固体燃料となる高分子燃料は元来難燃性を重視して開発されたものがほとんどで、燃焼速度(表面後退速度)が低く大推力発揮を要するロケット燃料に向いていない。従前の研究で高分子材の燃焼速度向上を最終的な目標とし、ロケット燃焼の場を模擬する環境下での燃料分解機構を解析する手段を開発した。具体的には、断熱性の高い高分子材料内、燃焼表面近傍での急激な温度上昇を模擬した上で、精確な質量分析を可能とする研究者G独自のスキマー機構技術を用い、常圧での熱分解生成物の同定に成功した。本研究ではロケット燃焼場を模擬すべく装置の高圧化に取り組み、1MPaまでの高圧化に成功した。高分子燃料に、燃焼速度向上が期待できる熱可塑性樹脂を用い1MPaでの実験を実施したところ、熱分解(低分子量化)の過程の中でエチレンが発生し、酸化剤との拡散火炎帯に入る前に芳香族化、最終的には煤を発生させることで燃焼現象が阻害されていることが判明した。エチレンを効率的に除去する手段として各種添加剤を試験した結果、五酸化バナジウムが有効であることを実験的に見出した。結果的には燃焼速度を50%以上向上することに成功し、観測ロケットレベルであれば十分に実用に供することができる領域まで高めることができた。また、エチレンパス、V2O5の作用機構については、Chemkinを利用した反応解析でも明らかとされ、査読付き論文に発表された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Analytical and Applied Prolysis
巻: 177 ページ: 106294
10.1016/j.jaap.2023.106294