研究課題/領域番号 |
21H01539
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30282677)
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研究分担者 |
下島 公紀 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70371490)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CCS / CO2漏洩 / CO2濃度 / 海洋調査 / 溶存酸素 |
研究実績の概要 |
海底下CO2貯留を実施する際、予期せぬ漏洩に備えて海水中CO2濃度の監視が要求される。しかし、海水のCO2濃度は,主に光合成や呼吸などの生物活動の影響により大きな空間的および季節的な変動をするため、漏洩によるCO2の濃度変化を自然変動から識別するための指標が必要となる。研究代表者は、近年、高い相関を有する新たな指標を提案し、従来の指標と新たな2つの指標を併用することで海水中CO2濃度の自然変動を漏出とのミスジャッジ(偽陽性)を回避できることを示した。そこで、令和3年度は、研究代表者が考案した2つの指標と従来指標を用い、自然CO2漏出海域にてCO2漏洩を確実に異常値として検出し、自然変動とミスジャッジする偽陰性を回避できることできるか確認することを目的とした。CO2自然漏出海域として長崎県橘湾の雲仙岳のふもとの海域を対象として、AUVに搭載したサイドスキャンソナーによりCO2自然漏出点を確定し、その点を中心とした概略同心円状に採水を実施し、DIC、TA、DOを滴定した。その結果、各指標とも漏出点の南西方向で中心からの距離2mの地点で高濃度を記録した。その他の地点では漏出を検出しなかった。漏出点の南西方向2mの地点で、使用した全ての指標により漏出を確実に感知したことで、自然変動とミスジャッジする偽陰性を回避できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に実施した橘湾での海洋調査では、研究代表者が考案した2つの指標と従来指標を用い、AUVに搭載したサイドスキャンソナーによりCO2自然漏出点を確定し、その点を中心とした概略同心円状に採水を実施し、DIC、TA、DOを滴定した。その結果、各指標とも漏出点の南西方向で中心からの距離2mの地点で高濃度を記録した。使用した全ての指標で漏出を確実に感知したことで、自然変動とミスジャッジする偽陰性を回避できることが確認できた。このことから、当該年度の目的はおおむね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に実施した橘湾での海洋調査では、各指標とも漏出点の南西方向で中心からの距離2mの地点以外の調査点では漏出を検出しなかった。このことは、漏出CO2が到達しているのに提案した指標では感知できなかったのか、そもそも到達していないのか判然としない。漏出位置でのダイバーの報告や船上の魚探情報から、橘湾のCO2の自然漏出は近傍の複数個所から間欠的な漏出であることが示唆されており、また漏出量が少量であれば、採水・滴定して、指標を用いてCO2の漏洩を検知する手法に限界がある可能性もある。そこで令和4年度は、共同研究者の所属機関が占有的に使用できる海域にて、CO2を連続的に、かつ一定流量で人為的に放出し、ダイバーによって正確に同心円状の位置で採水することで、漏出量一定のときに、漏出を検知できる範囲を確実に把握することを目的とする。これにより、複数指標による漏出検知手法の有効性と限界につき、同時に調査する。
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