研究課題/領域番号 |
21H01544
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
岡田 哲男 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10753048)
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研究分担者 |
川村 恭己 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50262407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コンテナ船 / ホイッピング / モニタリング / 操船支援 |
研究実績の概要 |
本研究は大型コンテナ船の設計条件や運航・海象等がホイッピングや波浪荷重・船体構造応答に及ぼす影響を定量的に評価し,効果的な設計・操船に資することを目的としている。 ホイッピングに関しては,昨年度の研究で8,600 TEUコンテナ船の実船計測で得られた時系列応力データを用いて,船体節振動による縦曲げ応力の振幅・位相の変化量から衝撃起振振幅を逆算し,その大きさからホイッピングを検出する新しい手法を確立した。この方法では,ホイッピングは衝撃起振による新たな過渡減衰振動の発生であるとの原点に立ち戻り,振動波形の振幅や位相の変化から衝撃起振力を逆算する点に特徴がある。また、その手法を従来の手法と比較し,本手法により大きい衝撃起振の発生を検出できること,その結果,単に弾性振動が大きいというだけではなく,既存振動の振幅や位相が衝撃荷重により変化する場合も検出できることを示した。さらに短期海象中のホイッピング強度を指標として海象・操船状態との関係を調べ,有義波高,波周期,船速,相対波向等との関係を調べた。今年度はこれらの成果を整理し,日本船舶海洋工学会講演会にて発表した。 さらに本年度は,船上で刻々計測されるモニタリングデータから船がまさに遭遇している海象における方向波スペクトルを推定し,その波浪パラメータの確率分布を時系列でベイズ更新していく手法を開発した。これらは,損傷確率評価,減速・変針等の操船判断に伴う将来の応答変化予測などを含む総合的な船上での操船判断支援のための基礎技術として期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考案した新しい手法で,実船計測データから衝撃起振の発生をホイッピングをして抽出することができた。またその抽出結果から,海象条件,波向,船速等とホイッピングの相関について考察することができた。その結果を日本船舶海洋工学会講演会で発表した。 さらに,より高度な操船支援を可能とするため,船体応答の計測データを用いて遭遇方向波スペクトルを予測し,そのパラメータをベイズ更新により確率的に推定する手法を開発した。以上のように当初の計画を概ね達成できていることから,順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究で,応答波形からホイッピング発生を抽出する新しいアルゴリズムを提案し確立した。この方法では,ホイッピングは衝撃起振力による新たな過渡減衰振動の発生であるとの原点に立ち戻り,振動波形の振幅や位相の変化からある時点における衝撃起振の発生を推定するところに特徴がある。これにより,抽出されたホイッピングは純粋に衝撃起振に対応することとなり,より正確なホイッピング発生時間間隔の確率分布を求めることが可能となった。また,連続加振によるホイッピング応答の重畳のみならず相殺や位相のずれも確率的に取り扱うことが可能となった。さらに,船上で刻々計測されるモニタリングデータから船がまさに遭遇している海象を推定し,その波浪パラメータの確率分布を時系列でベイズ更新していく手法を開発した。これらは,損傷確率評価,減速・変針等の操船判断に伴う将来の応答変化予測などを含む総合的な船上での操船判断支援のための基礎技術となる。 今後はさらに,船体モニタリングデータに基づく方向波スペクトル推定の更なる精度向上を目指した研究を進める。具体的には, ・PCA等の次元削減技術を応用し、自由な形状の方向波スペクトル予測を可能とする。 ・特に追波中における応答周波数のドップラーシフトの処理に伴う誤差を最小化する応答スペクトルのモデル化(離散化)方法を検討する。 これらの実施により,操船支援システムの総合的な信頼性向上を達成する。
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