本研究は大型コンテナ船の設計条件や運航・海象等がホイッピングや波浪荷重・船体構造応答に及ぼす影響を定量的に評価し,効果的な設計・操船に資することを目的としている。この目的を達成するための有力な手法の一つとして,船上でモニタリングされたひずみや船体運動などの船体応答データから遭遇している方向波スペクトルを推定する研究に,昨年から取り組んでいる。本年度は特に,主成分分析(PCA)やオートエンコーダーにより方向波スペクトルデータの次元数を削減し,効率良く精度の高い波浪推定を行う手法について検討した。その結果,高周波域の波浪推定精度などに若干の問題は残るものの,全般的には良い精度の推定ができることを示した。この手法では,スペクトルの形状を仮定せず,任意の形状の方向波スペクトルを推定できるので,高い汎用性が期待できる。そのほか,追い波中で出会い周波数がある狭い範囲に集中してしまうために,誤差が大きくなり推定精度が悪化する問題に対する種々の対策を検討した。さらに,実船に搭載したセンサー毎の応答特性に応じて,センサー毎,周波数毎の重み付け評価を行うなど,波浪推定精度向上のための最適なセンサー組合せ方法について検討した。
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