固体高分子形燃料電池(PEFC)は膜電極接合体(MEA)をガス拡散層およびセパレータで挟んだ構造になっており,発電性能を向上させるためには電解質膜を適正な湿潤状態に保ちドライアップを防ぐとともに,電極触媒層で生成した過剰な水分を速やかに排出してフラッディングによる酸素供給の阻害を防ぐことが重要である.ガス拡散層の表面には一般に撥水性のマイクロポーラス層(MPL)が塗布されており,MEAとの接触状態を改善すると同時に,ドライアップやフラッディングの発生を防止している.従来の撥水MPLの場合,耐ドライアップ性を高めるための設計指針と耐フラッディング性を高めるための設計指針が各々異なっており,耐ドライアップ性を高めたMPL付き拡散層は,一般に排水性が悪化して耐フラッディング性が低下することが問題である.長時間の高負荷運転が要求される舶用燃料電池の場合,過剰な生成水を速やかに排出させ,電極触媒層への酸素供給を促進させることが重要であり,MPL付き拡散層の酸素拡散抵抗の低減が重要課題になっている.そこで本研究では撥水MPLの表面に薄い親水層を塗布した親水・撥水MPLを開発した.親水MPLの親水性の違いが排水性と発電性能に及ぼす影響を調べ,耐ドライアップ性と耐フラッディング性を向上させるための設計指針について検討した.その結果,親水・撥水MPLの場合は,親水性を付与したことにより電極触媒層における保湿性が高まるため耐ドライアップ性が向上する.適正な親水・撥水MPL付き拡散層を用いると,電極触媒層から基材への排水性が高まり,電極触媒層におけるクヌーセン拡散抵抗が低減するため,従来の撥水MPLと比較して,高負荷(高電流密度)条件で耐フラッディング性が大幅に向上し酸素拡散抵抗が低減できることが明らかになった.
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