当該年度は,レーザやマイクロフォンを用いた超音波の非接触計測と,その収録データから機械学習を用いた異音判定技術について検討した. 非接触計測では,初めにレーザ超音波法における課題の一つを解決するレーザシフト法について実験的に検証した.レーザ照射により発生する超音波を用いた非破壊検査手法であるレーザ超音波法において,信号のSN比を向上させるためには,レーザ出力を増大させることが最も簡単な方法である.しかし,その場合レーザ照射点に損傷を与えてしまうという問題がある.そこで,レーザ照射点を発生する超音波の波長以下で微小にシフトさせながら走査する手法を提案した.その結果,表面の損傷を抑制しつつ十分なSN比の超音波信号を取得することができるようになった. また,音響マイクロフォンにBluetoothとバッテリーを内蔵したマイクデバイスを用いて,配管から漏洩する音響波を非接触で計測し,機械学習による異音判定に利用した.この異音判定では,異音発生というイベントの少なさを考慮しAuto encoderという教師無し学習を用いた.Auto encoderの前処理として,信号波形を短時間フーリエ変換し,そのスペクトラム画像を学習に利用した.その結果,9種類の異なる実験結果から適切に異音が判定できるという結果を得た.またリアルタイムで判定まで可能な計測システムの構築を行っており,今後は実験的にその効果を検証していくところである.
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