研究実績の概要 |
2013年,日本国内で風力発電用の風車が破損する重大事故が続けて発生した.これまでに,日本国内において風車ナセルが地面に落下した事故は前例が無い.これまでの我々の研究成果から,風車重大事故の主要な原因が,地形起因の「地形性乱流」であることが示された(例えば,Takanori UCHIDA,Numerical Investigation of Terrain-induced Turbulence in Complex Terrain by Large-eddy Simulation (LES) Technique, Energies, 11(10), 2638, 2018).風車近傍の地形起伏や地表面粗度の急変に起因した「地形性乱流」は,風車ブレードやタワー,ナセルを「振動」させ,金属疲労を著しく進展させるとともに,風車の発電出力にも多大な影響を与える.また,風車ブレードが回転する「風車ウエイク」に起因した「回転性乱流」も同様な影響を与える.こうした状況の中,「地形性乱流」と「回転性乱流」が複合した複雑な状況下では不明な点が多い.
本研究では,大型商用風車のブレードとナセル内部に歪ゲージを設置し,「地形性乱流」および「回転性乱流」と「風車振動(風車の疲労荷重)」との相関性を明確化する実証研究を実施した.対象とした風車周辺の地形状況を詳細に再現し,これらの標高データを用いた数値流体シミュレーションを行った.実計測データと数値シミュレーションデータを総合的に比較・検証し,風車ブレードとナセル内部機器に与える乱流影響に関する評価指標の策定を試みた.
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