研究課題/領域番号 |
21H01578
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
西本 哲也 日本大学, 工学部, 教授 (30424740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自動車安全 / 救命救急 / 傷害予測 / 事故自動緊急通報システム |
研究実績の概要 |
自動車交通事故を対象として,社会インフラとしての先進事故自動通報システムが普及していない交通環境にある国々の交通事故での人体傷害を予測するために,事故地点の環境情報(制限速度,事故類型等)と生存時間を考慮した「現場救急傷害予測アルゴリズム」を開発することを目的とした研究を実施した.研究は人口密度が低く,大陸であるために外傷センターまでの距離が遠く,旧型車も数多く走行しているオーストラリアを対象とし,特に南オーストラリア州の事故についてアデレード大学と連携をした研究を実施した. 研究初年度は,南オーストラリア州の警察と国交省の交通事故統計データであるSouth Australian Traffic Accident Reporting System (TARS)を傷害予測アルゴリズム構築のベースデータとした.TARSより2004年から2018年に発生した15年間の自動車事故のデータを車両単独と車両相互事故に限定し,制限速度,市の中心部からの距離,道路線形,昼夜区分,乗員年齢,シートベルト着用有無,衝突形態等の重要となるリスクファクタを赤池情報量基準に基づいて選定し,自動車乗員を対象とした傷害予測アルゴリズムを構築した. 研究二年度目の本年度は,自動車からの自動通報が無くても活用可能で,重傷リスクに対する搬送時間の影響を反映した自動車乗員のための傷害予測アルゴリズムの構築とした.そこでアデレード大学のCentre for Automotive Safety Researchが管理するSerious Injury Database (SID)から搬送時間が死亡・重傷リスクに及ぼす影響を解析した.そしてオッズ比として定量化し,搬送時間の効果をTARSへリスクファクタとして混成する新しい解析手法を試みた.その結果,救命時間の効果を考慮した傷害予測アルゴリズムを構築することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南オーストラリア州の交通事故統計データであるTARSデータにSerious Injury Database (SID)を混成させることにより,交通事故での救命に重要となる時間をファクターとした傷害予測アルゴリズムを構築できた.救急搬送時間,救急車やヘリコプター等の搬送手段,解剖学的損傷程度等のデータを傷害予測アルゴリズムに混成させるべくSerious Injury Databaseの救急搬送データを中心とした解析を実施し,重傷と予測された負傷者に救急車やドクターヘリの早期出動を実現するための「現場救急傷害予測アルゴリズム」へと発展させることができている.これよりこの2年間で傷害予測アルゴリズムが構築できており,順当に進捗できたものと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2種類の異なるデータベースを混成させたアルゴリズムの精度について検証することが最終年度として必要である.そのため,アデレード大学で実施された詳細事故事例調査の結果を活用して現場救急傷害予測アルゴリズムの妥当性を検証する.ここでは構築した傷害予測アルゴリズムについて,検証用データを用いて実傷害と予測結果によって重傷事故を重傷と正しく判定したケース,重傷事故を軽傷と誤判定したアンダートリアージと呼ばれるケース,軽傷事故を重傷と誤判定したオーバートリアージと呼ばれるケースに分類して検証を実施する予定である.
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