研究課題
今年度においては,熊本県阿蘇市内の火山灰で覆われた牧草地の斜面の観測を継続するとともに,愛媛県松山市の離島である興居島(花崗岩)内の斜面において同様の観測を実施した。同島では,平成30年(2018年)7月豪雨の際,開析谷沿いに表層崩壊が多発しており,本研究では,この豪雨により表層崩壊が発生した谷壁斜面に伸縮計を設置し,斜面変動観測を実施した。その結果,研究期間中の夏季に松山市では48時間累積雨量が262.5㎜となる降雨があり,この降雨により観測斜面がクリープ変動をし始め,間もなく崩壊した。崩壊時の推定湿潤前線は崩壊深とほぼ同じ値を示していることも確認された。これとあわせて,同斜面に設置した土壌水分計測システムのリアルタイム計測結果においても異常波形が観察され,その後に計測結果が送信されなくなった。災害後に現地に赴き状況を確認したところ,観測サイトの斜面が崩壊し,土壌水分計測システムは土石流により100m程流されていたことを確認した。こうした斜面災害の機構分析を進めるため,空中写真判読によって把握した過去数十年間の植生被覆変遷を類型化して航空レーザー測量データによる樹高-樹木密度分布の解析結果と比較した結果,植生被覆変遷から推定される森林の発達度は推定樹高と調和的で,長期間人為的改変を受けていない区域ほど樹高の高い樹木個体が多くなっていることが確かめられた。また,長期間人為的改変を受けていない区域では,豪雨時の斜面崩壊の発生密度や崩壊面積率が有意に小さくなることがわかった。あわせて観測斜面を模擬したモデルに基づく降雨遠心模型実験およびクリープ変形を考慮した数値シミュレーションなどに取り組んだ。最後に,研究実施期間全体を通じた成果の取りまとめを行い,今後の研究課題等について検討を行った。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geosciences
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