研究課題/領域番号 |
21H01587
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長山 智則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80451798)
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研究分担者 |
蘇 迪 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (40535796)
西川 貴文 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50512076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 画像解析 / 差分解析 / ひび割れ / 機械学習 / 振動 |
研究実績の概要 |
道路舗装表面に現れる変状には,土砂崩れや大規模な沈下の前兆となる危険なひび割れや,事故を誘発する大きなポットホールの発生に至るものがある.重大な道路構造物被害につながるこれらの危険な変状を早期に捉える仕組みが求められる.車内設置された汎用カメラの画像を収集して広域のひび割れを効率的に抽出する取り組みはあるものの,道路網に無数に存在するひび割れを網羅的に検出しても意味を無さない.そこで,車載一般カメラの動画像に対する精緻な画像処理と,車両動揺データ分析を活用した2段階の位置推定技術に基づいて,災害前後や平時のひび割れ変化量,つまり差分を算出し,重大な道路構造物被害の前兆となり得る進行性のある変状を抽出する.地震や大雨等の災害時には危険な兆候を迅速に把握し,平時には進行性をもつ変状を効率的に捉えることで,二次災害の軽減や効率的な予防保全に資するものである. 令和4年度は,1)GPSに依存しない車両位置情報推定方法の精度の明確化,および2)ひび割れ特徴量の評価に取り組んだ. 1)研究代表者らは車両応答の逆解析によりタイヤ位置における路面縦断形状を正確に推定する手法を開発している.昨年度は,実験データに適用することでその精度を明確にした.更に,GPS情報と,路面縦断形状に基づいて推定した速度を,データ同化手法により統合し走行軌跡を正確に推定した.路面縦断形状に基づいて推定した速度を利用することでGPS信号の無い区間においても,GPS信号がある区間と同様に車両位置を正確に推定できることを示した. 2)特徴点抽出のアルゴリズムの改善等により位置合わせ精度を向上するとともに,ひび割れレベルでの位置合わせをしなくとも経時変化を評価可能なように,様々なひび割れ評価指標(ひび割れ率,ひび割れのアスペクト比,交点数等)を自動算出し,統計量の観点から経時変化を評価する方法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPSに依存しない位置推定に関しては,一昨年までの研究成果に基づいて,推定路面縦断形状から算出した走行速度をIMU計測値と合わせて解析することで,GPSを受信できない区間においても,GPS受信区間と同等の位置推定が可能となった. ひび割れの評価に関しては,鳥瞰変換画像への機械学習処理の適用により,様々なひび割れ指標を自動的に算出できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
1.経時変化分析を可能とする位置合わせの高精度化 複数時点において撮影した路面画像の画像解析により,経時変化分析をするためには,高精度に位置合わせをする必要がある.研究代表者らはこれまでの研究により,GPSを利用した場合,GPSを利用しない場合においてそれぞれ位置合わせをする手法を開発してきた.しかし,ひび割れの変化を評価するためには更なる高精度化が必要である.GPS利用あり,無しそれぞれにおいて数m程度まで位置合わせができているため,複数時点で取得した画像の特徴量マッチングを利用して更に高精度に位置合わせすることを目指す.舗装表面は一般に特徴量に乏しく,また木や標識など撮影時に変化する特徴量もあるため,特徴量マッチングによる位置合わせは困難であるが,機械学習ベースのマッチング手法も活用した,高精度位置合わせを検討する.既に一部の画像に対してマッチング手法を適用し基礎的な検討はしており,様々な路面状態の区間の位置合わせへの適用を図る. 2.ひび割れなど路面変状の変化の評価 昨年度までの研究により,様々なひび割れ評価指標(ひび割れ率,ひび割れのアスペクト比,交点数等)を自動算出することが可能となった.しかし,日射条件等により算出されるひび割れ指標にはばらつきがあり,経時変化を評価するために十分な精度とはなっていない.日射条件が揃ったデータを抽出する,日射条件の違いを正規化する,あるいは日射条件の違いにロバストな画像処理法を採用する,といったアプローチにより,ひび割れなどの路面変状の経時変化を評価するための検討を行う.
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