研究課題/領域番号 |
21H01589
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
鶴 哲郎 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80371730)
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研究分担者 |
尾張 聡子 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (50846350)
山中 寿朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60343331)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海底メタンガス / 環境配慮型振源 / 同時発振地震探査 / 移動集積メカニズム / 断層解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、東京湾北部で発見された海底ガスの全容を明らかにすることである。海底ガスの主成分はメタンであることから、その強い可燃性を考慮すれば、災害のリスクは否定できない。したがって、海底ガスの分布域と分布量を明らかし、さらに、その起源および移動集積の経路とメカニズムを明らかにすることは、防災・減災を考える上で意義がある。 令和4年度は、地震探査データの取得とガス採取に重点を置き、下記の研究を実施した。 (1)地震探査データの取得 東京湾北西部沿岸域およびそこに流入する河川(墨田川、荒川、旧江戸川)の下流部において、環境配慮型振源である水中スピーカーを用いて、反射法地震探査データを取得した。その結果、東京湾アクアライン付近から連続する海底ガス層の分布は荒川河口部で一旦途切れるが、河川域で再びガス層の分布が確認された。また、それらの分布は断層が発達する場所と関係しているように見える。また、これまで東京湾で観測した地震探査データを用いて、東京湾北東部におけるメタンガスの分布量の推定を試みた。今回は、最も浅いガス層(100%メタンガスと仮定)のみを対象とした暫定的推定結果であるが、CO2換算で2200~2800万トンとなり、東京都の温室効果ガス年間排出量の1/3以上の量に相当するということが分かった。 (2)ガス採取 令和4年度は東京湾でのガス採取は不成功に終わったものの、東京低地においてガスを採取し、組成分析を行った。その結果、1サンプルではあるものの、初めてエタンの濃度測定に成功した。これまで採取されたガス中の炭化水素としてはメタンが主成分であり、エタン以上の炭素数を持つガスについては、定量的な濃度測定は成功しなかった。今回の分析結果により、当該地域のガスの起源が南関東ガス田起源である可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震探査とガス採取により、海底ガスが東京湾北部から陸域にも拡がっている可能性が示された。東京湾でのガス採取は不成功に終わったものの、陸域では1サンプルではあるが採取に成功し、分析結果から南関東ガス田の水溶性天然ガスを起源とする可能性が高まった。以上により、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の成果を受けて、最終年度である令和5年度は下記の3項目に重点を置き、海底ガスの分布域と分布量の推定、さらに、海底ガスの起源と移動集積メカニズムの解明に向けた研究をまとめる計画である。 (1)海底ガスの分布量:令和4年度に実施した浅層部のガス分布量の推定に加え、令和5年度は、さらに深部のガス層についても解析を行い、東京湾北部の海底ガスの分布量を試算する。使用するデータは、令和4年度までに取得した地震探査データとする。また、海底ガスの分布域の偏在性を明らかにする。 (2)ガスの起源:令和5年度は、東京湾北部および東京低地帯において湧出ガスの観察および採取を行う。採取したガスの組成分析を行い、メタン分布域の陸域への拡がりおよび起源について考察する。 (3)海底ガスの移動集積メカニズム:上記2項目に関する研究結果と、これまでの調査研究で明らかになってきた断層群とを詳細に対比し、海底ガスの移動経路としての断層の役割を明らかにする。その結果に基づき、海底ガスの移動集積メカニズムを解明する。
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