研究課題/領域番号 |
21H01591
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹見 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (10314361)
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研究分担者 |
中山 浩成 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (50535903)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大気拡散 / 降灰 / 予測 / LES / 火山防災 / 火山灰 / 都市災害 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、観測データと高解像度数値シミュレーション技術を融合し、火山噴火に伴う火山灰の拡散および降灰を市街地内の局所規模で予測する評価手法を確立することを目的とし、今年度の研究を進めた。桜島火山からの降灰を想定し、これまでの気象観測情報に基づき、非降水時および降水時の噴火イベントを抽出した。火山噴出量に係わる計測値は、気象庁による推定値および京都大学防災研究所桜島火山観測所による観測値を用い、火山噴出量データを収集した。抽出した噴火事例において、鹿児島市街地を対象とした解析を進めた。2021年度に開発した建物解像気流・拡散LESモデルにより、火山灰の大気拡散および降灰を想定し、市街地における物質輸送の数値シミュレーション・予測実験を実施した。数値シミュレーションにおいては、建物の立地パターンや立地密度、建物高さの凹凸といった市街地の幾何学的な形状に着目し、建物の配置密度や気流に対面する見付面積率といった建物配置を記述する幾何学パラメータにより街区の特徴を定量的に評価した。市街地内での物質輸送の数値シミュレーションを実施し、物質量の高濃度領域と低濃度領域の分布特性や滞留時間について分析し、市街地の幾何学的形状に対する濃度分布の依存性について解析した。また、実在都市での気流や拡散は対象とする都市形状への依存性が高く、対象都市の特殊性を排除することは容易ではない。一方で、市街地の幾何学的形状を量的に示すパラメータにより濃度分布パターンを整理できれば、より普遍的な理解を得ることができる。そこで、実在都市を模した理想的な粗度分布を与えた物質拡散の数値実験を行い、建物間の距離と建物高さとの関係によりキャノピー内部での気流構造が変化し、その結果として濃度分布も変化することを示した。これらの研究で得られた成果は、国内外の学会等で発表し、学術誌に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究項目について、それぞれ研究開発を進めた。本研究課題では、実在都市の建物や構造物の地理情報データを利用した建物解像気流・拡散LESモデル開発が鍵となることから、今年度は当該LESモデルを活用した研究を進めた。本研究課題の参画者は、これまで建物解像LESモデルにより市街地内での乱流特性や乱流の組織構造についての研究を実施してきたことから、本研究課題では、乱流の組織構造に対応した物質量の濃度分布特性に着目して解析を進めた。一般に粗面境界層では、乱流の組織構造の形成は粗度の配置密度や分布に強く影響を受ける。そのため、建物配置を記述する幾何学パラメータにより市街地の幾何学的形状を整理した。こういった幾何学パラメータを用いて物質濃度の平均的特徴について定量的に評価した。特に、高濃度領域と低濃度領域の分布パターン、物質量が街区内でどの程度滞留するかを滞留時間について解析を進め、市街地内での特徴的な濃度分布について定量的に評価した。また、実在都市を模した理想的な粗度分布を与えた数値実験を行い、建物間の距離と建物高さとの関係によりキャノピー内部での気流構造が変化し、結果として濃度分布も変化することを示すことができた。学会等での成果発表や国際誌での論文発表も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきた市街地の建物解像気流・拡散LESモデルは、粗度を規則的に配置させることで実際の都市を模した理想化した数値実験を想定したものであった。本研究課題により、鹿児島市など実在都市での市街地の気流場や拡散場の解析に展開することができるようになった。今後は、超高解像度の建物解像の気流・拡散モデルに観測データを同化し、市街地内の建物配置や高度の違いにより複雑に振舞う気流場や拡散場の再現精度を向上させる取り組みを進める。建物の周囲で気流が迂回したり収束したり強化したりといった気流の微細規模での乱流的な時空間変動を精緻に再現することにより、降灰の吹き溜まりなど集中化や風速強化による降灰域の拡大といった局所規模での不均一な降灰パターンを表現可能とするモデル開発を進める。
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