研究課題
本研究の目的は,基盤岩内部の水文力学的挙動を解明することである。本研究では,これまで困難であった岩盤内の地下水の動きと斜面変形との関係を解明するため,ひずみ計と地下水位計に代わり,光ファイバケーブルを使用する。光ファイバケーブルは岩盤のひずみ変化を高精度・高解像度で計測可能であり,ひずみ変化に加え温度変化も計測可能である。本研究では,物質の種類によって温度変化速度が異なることを利用し,ボーリング孔の坑口から孔底までを加熱して地下水流の位置の特定を試みる。当該年度には,①前年度に構築した光ファイバによる温度・ひずみ変化測定システムを用いた,ボーリング孔内の温度・ひずみ変化の測定開始,②ボーリング孔近傍における微動観測の開始,③岩盤・土壌内で水流を発生させ波形の変化を確認する室内試験,を計画した。以下に,それぞれの実績を記す。①前年度にケーブル類の設置まで完了していたため,測定機材の設置作業から開始した。当初,3坪ほどのコンテナハウスの設置を予定していたが,試験地が市街化調整区域内であるためコンテナハウスを設置できず,代わりにより小さな保管庫を設置することとなった。小型保管庫では機材を置けるスペースが限られるため,機材の配置を再構成して省スペース化された計測システムを再構築した。②対象斜面の微少な揺れを検知するため,稠密地震計を2台設置した。③全長1mおよび2mのセメント試料を作製し,試料中の金属ケーブルを加熱する実験を行った。試料の加熱中に試料表面を局所的に水で濡らした場合,その内部の温度上昇率は濡らさない場所の内部に比べ低くなることがわかった。したがって,試験地のボーリング孔内のケーブルを加熱すれば,水分が多い深さ(地下水の位置)を特定可能であることが示唆される。
3: やや遅れている
省スペース化するための測定システムの再構築に時間を要し,当該年度内に現場試験を開始できなかったため。
現場試験のための準備が完了したので,試験を開始する。データ取得と解析を同時に行い,地下水位置の特定を試みる。また,地下水の位置とひずみ変化の位置との対応の有無を確認し,水文力学的挙動の解明を試みる。
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International Journal of Environmental Science and Technology
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10.1007/s13762-022-04697-5