研究課題/領域番号 |
21H01597
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
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研究分担者 |
権田 豊 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10303116)
内田 太郎 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60370780)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60511508)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 浮遊土砂 / 急激な土砂堆積 / 土砂・洪水氾濫対策 / 土石流 / 浮遊砂 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
豪雨時に河川上流域で発生する新規崩壊等から多量の土砂が河道に流入すると、谷出口より下流の河道内において急激な土砂堆積が生じ、大規模な土砂と泥水の氾濫が引き起こされる。一般的な土石流災害に比べて勾配の緩い領域にまで広範囲にしかも大量に土砂が氾濫・堆積するため被害が深刻である。遊砂地等を設けて家屋被害を抑えようという議論も始まっているが、有効な対策には数値シミュレーションによる施設効果・被害範囲の予測が不可欠である。一方で、土石流や浮遊砂といった従来の流砂モデルは適用条件が限られており、勾配が大きく変化する区間で、しかも細砂から岩石までもが混在する土砂の移動を高い精度で表現できる流砂モデルは現存しない。 本研究では土砂・洪水氾濫対策に有効な数値シミュレーションのエンジン部となる新たな流砂モデルを開発し、既往災害への適用を通してその妥当性を検証しようとしている。今年度は、掃流状集合流動領域を対象に、特に細粒土砂の挙動に着目し、複数の数値計算モデルを作成した。生産土砂の粒径と河床材料の粒径に明確な違いがある2つの流域を対象とした再現計算を行い、生産土砂の粒径および細粒土砂の取扱いが数値計算結果に及ぼす影響を明らかにした。また、細粒土砂から巨礫まで幅広い粒度分布をもつ桜島有村川流域の土石流を対象として降雨と土砂の流出シミュレーションを実施し、現地で観測されているハイドログラフの再現を試みた。そして、土石流中の細粒土砂の存在割合が土石流の到達時間やピーク流量などの計算結果に及ぼす影響について明らかにした。さらに、河床粗度が大きく、ほぼ固定床と見なせる条件でこれまでに実施された浮遊砂流の実験事例を収集し、結果をデジタル化し、今後の数値シミュレーションの検証用データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値シミュレーションのエンジン部となる流砂・河床変動モデルを新たに開発し、2つの流域への適用を通じて妥当性の検証を行っている。また、桜島有村川流域でのハイドログラフの観測結果に対して数値シミュレーションによる再現を試み、細粒土砂の存在割合の影響を調べている。細粒分を含む土石流に関する水路実験は今年度結果を得るところまでは進んでいないが、実験水路や観測手法の準備も進んでいるため、2022年度には実験結果を得られるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発を続けている数値シミュレーションのエンジン部である流砂・河床変動モデルをさらに改良し、現地観測結果の再現を通じて妥当性を検証する。また、細粒分を含む土石流に関する水路実験を実施し、勾配変化点における土砂の堆積に関して細粒土砂の果たす役割を明らかにする。この結果を基に数値シミュレーションモデルのエンジン部をさらに高度化できると考えている。
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