現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チタンの高温酸化現象はTiO2形成を伴う造膜反応に加えて、α ケース形成を伴う酸素のチタン中への拡散固溶から構成されており、その複雑な酸化挙動を端的に表現できるモデルを構築することが重要である。これを踏まえ、今年度は第一原理計算用の表面モデル(スラブモデル)を構築し、合金元素の効果を系統的に明らかにすることができた。添加元素としては、すでにある実験報告を参考にしながら、Zr, Hf, Nb, Mo, Al, Ge, Si, Gaとした。 α-Ti(0001)表面を模擬するために11層からなるスラブモデルを導入した。このモデルは各層4×4のTi原子から構成される。テスト計算に基づき合金元素が表面に偏析したモデルを構築した。表面に酸素分子を吸着させ、分子が解離するかの確認をおこない、次に解離した酸素原子の表面吸着エネルギーを求めた。次に酸素原子を表面第1層上、1-2層間、2-3層間に配置し、その表面被覆率を変えながら、酸素原子が固体内拡散するための活性化エネルギーを、合金元素とTi間の電気陰性度差の関数として整理した。なお、密度汎関数理論に基づく第一原理計算にはQuantum ESPRESSOを使用した。第一原理計算で得られた表面吸着エネルギー、内部拡散エネルギーを電気陰性度の関数として整理することで、チタン表面の耐酸化性に寄与する合金元素を明らかにし、特にNbやHfが有効である事を示した。さらに、電気陰性度が耐酸化特性の指標になることを示すことに成功した。 以上の事より、本課題は概ね順調に進んでいると言える。
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