研究実績の概要 |
Ti-Ni-Al三元系について、第一原理計算のみで状態図作成を進めた。自由エネルギーは、電子系のエネルギー(0ケルビン)、混合エントロピーの寄与、格子振動の寄与、電子の熱励起の寄与、スピンオーダリングの寄与として評価した。本研究では混合エントロピーの寄与はBragg-Williams近似で、格子振動の寄与は調和近似で、電子の熱励起の寄与は電子の状態密度から評価した。固溶体のランダム原子配置にはSQS(Special Quasirandom Structure)モデルを導入した。得られた状態図は全体的な傾向として実験を良く再現できている。今後の課題として、不安定相のフォノン計算や液相について、より良い評価方法を検討する必要がある。 光触媒材料であるアナターゼ型酸化チタン(TiO2)はバンドギャップ(Eg)がUV域に対応しているが、炭素(C)や窒素(N)などの元素添加により可視光応答化する。その応用として可視光応答型抗菌機能を有する生体材料開発が挙げられる。本年度は、全電子GW計算を用いて複数の欠陥種からなるC, N添加アナターゼ型TiO2モデルについて電子状態解析をおこない、Egの定量評価およびEg狭窄メカニズムを明らかにした。アナターゼにC, Nを単体であるいは共添加し且つ酸素空孔を導入した様々なモデルを構築し、DFTにより形成エネルギーを評価して、相安定性を求めた。相安定性は700 Kにおいて酸素化学ポテンシャルまたは酸素分圧の関数で整理した。得られた安定なモデルについて、全電子GW計算により電子状態を解析した。全電子GW計算にはTOMBO (TOhoku Mixed Basis Orbitals ab initio program)を用いた。その結果、C, N共添加モデルは中程度の酸素分圧におけるC, N共添加モデルは可視光応答型光触媒として最も有望であることを示した。
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