研究課題/領域番号 |
21H01608
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
桜庭 裕弥 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (10451618)
|
研究分担者 |
林 将光 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70517854)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | スピンホール効果 / スピン軌道トルク / ホイスラー合金 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
大きな異常ホール効果を持つことで知られるCo2MnGaのエピタキシャル薄膜を作製した。薄膜は高いL21規則度に加えて、バルク単結晶に匹敵する大きな異常ホール伝導率を示した。第二高調波によるスピン軌道トルクの評価を行った結果、従来報告を超える大きなスピン軌道トルク効率を観測した。 また、大きなスピンホール効果を示しうる新規ホイスラー材料として、重元素Irを含んだ新規なホイスラー合金について、スピンホール伝導率の第一原理計算を行った。その結果、非磁性状態において1000(h/2πe)S/cmを超える大きなスピンホール伝導率が得られることが分かった。 各磁気状態のエネルギー的な安定性を計算した結果、強磁性が最も安定であったが、強磁性転移温度が低いため、室温では非磁性的な性質が得られることが期待される。この理論予測に基づき、エピタキシャル薄膜と多結晶薄膜の作製を行った。コスパッタ法により実験的に薄膜成長を試みた結果、B2以上の規則状態を有する薄膜を実現することができた。L21は規則状態は得られなかったため、第一原理計算に対してディスオーダーを取り込むことが重要になる。磁気特性を評価した結果、極低温から室温まで、強磁性を示すヒステリシスは観測されず、非磁性となっていることが確認された。スピン軌道トルクを評価するため、本薄膜をウエッジ形状に作製し、その上部に磁性薄膜を形成させ、ホールクロスデバイスを作製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標としている新規なスピンホールホイスラー材料が理論的に開拓され、その単結晶薄膜の成長にも成功した。最終年度に向けて順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
重元素Irを含む新しいホイスラー材料で、大きなスピンホール効果が理論予測された。今後は、実験的な実証を目指す。内因性のスピンホール効果は、電子構造の変化に敏感であることから、組成変化に対する評価を行う。コンビナトリアル成膜装置を利用し、組成依存性を評価する。またX2YZの組成の中で他の重元素や、元素置換を行った系でもより大きなスピンホール効果が得られる可能性もある。理論的な材料探索を引き続き進めていく。
|