研究実績の概要 |
巨大磁気熱量効果を示すFe系遍歴電子メタ磁性材料において、磁気熱量効果の指標の一つとされる「断熱温度変化」に注目し、i) 断熱過程の非平衡製と遍歴電子メタ磁性転移の過渡過程との関連について解明し、ii)磁気冷凍サイクルを形成する際に断熱過程が他のサイクル過程にどのように連結して行くのかについて、基礎と応用の両面から、断熱温度変化過程を追求することを主眼に研究遂行してきた。 前年度までの新規計測法および理論モデルの構築を進め、断熱温度変化を生む過程について詳細な考察を行った。従来、断熱温度変化は、転移の次数(1次or2次)を意識することなく、温度変化だけが議論されてきたため、1次転移の過渡過程との関連性が未解明であったが、本研究の成果により、以下の重要な結論を得た。i) 1次相転移の断熱過程が2相共存状態下で増大されるのは、断熱パスが、磁化及び温度の関数しての自由エネルギー F(M,T) における平衡極小点と無関係な、極大鞍点において非平衡な過程を経るためである。ii)断熱過程では、平衡点から到達する2相共存点(過渡状態の停留点)を始状態として断熱パスを経るが、終状態は平衡到達の過渡停留点とは別の状態であり、さらにそこから逆パスを経ると、当初の出発点とは別の点に達する。iii)これらの断熱到達点は、F(M,T)の2重極小構造と鞍点の持続性が断熱パスの経路を決め、実験的に確かめられた相履歴に断熱パスが遮られることとリンクする。iv)ただし、断熱パスの終状態を決める相転移履歴は、相転移カイネティクスを反映したものであり、静的に決定される履歴幅とは異なる。 以上の学理上の特徴に加え、応用上の磁気冷凍において、断熱温度変化の制御のためには、F(M,T)の鞍点を意識した履歴制御が重要であることが示され、これは、磁気冷凍機の弱磁場駆動につながる重要な指導原理への道を開くものである。
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