研究課題/領域番号 |
21H01613
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 一誓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60821717)
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研究分担者 |
柳 博 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30361794)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薄膜太陽電池 / 硫化スズ / スパッタリング |
研究実績の概要 |
本研究では、最近作製方法が明らかとなったn型SnS薄膜を用いて、高効率なSnSホモ接合太陽電池を実現することを目指している。初年度は、硫化物スパッタリング装置の立ち上げに伴い、基板加熱機構のキャリブレーションや、カソードの設置位置の最適化を行った。また、硫黄プラズマ供給装置から得られる硫黄プラズマの分光分析を行い、プラズマの供給条件の最適化についても進めた。スパッタリングカソードの異常放電によるトラブルから薄膜の作製にとりかかれない期間があったため、その期間においては、n型SnS単結晶を用いた太陽電池素子の作製と評価を進めた。従来の光電子分光法を用いた研究から、n型SnS単結晶とMoO3薄膜の接合では、界面においてSnSが大きなバンドディングを示すことがわかっていた。この接合に透明電極や裏面電極を取り付け、太陽電池へと応用する素子を作製したところ、従来のSnS太陽電池の開放電圧の最高値(405 mV)を大きく超える440 mVの開放電圧が得られた。これらの結果は、ホモ接合によって欠陥の少ない界面が実現できれば、SnS太陽電池から大きな開放電圧が得られるという本研究の方針を明確にするものであった。また、この研究の過程で、SnS単結晶を用いることで良質な界面が形成しやすく、SnSの本来の物性を反映する素子が得られることに気づいた。2022年度は、カソードのトラブルが解決次第、薄膜堆積とホモ接合に関する実験を迅速に進めるとともに、SnS単結晶と他の半導体とを接合した界面の光電流特性の分析についても進めることとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
成膜装置の立ち上げに伴い、硫黄プラズマ供給装置の運転条件の最適などの作業は進んだもの、前述したとおり、スパッタリングカソードに異常放電が生じ、硫化物が正常に堆積しないというトラブルが生じた。本来予定していた薄膜堆積条件の最適化についてはやや遅れている状況である。従来の予定を変更してすすめた、単結晶を用いた研究により、SnS太陽電池の高効率化に関する知見が得られ、一定の成果があった。カソードのトラブルに関しては、装置メーカーと原因を究明しており、2022年度には薄膜堆積に関する実験を迅速に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はn型およびp型SnS薄膜の堆積条件を最適化し、ホモ接合素子の太陽電池特性を解析する。薄膜のキャリア密度や移動度が発電特性に与える影響を調べる。外部量子効率の測定からキャリア収集長を評価する。特に、キャリア収集長に大きな影響を与えると推察される薄膜中のドーパント量やキャリア密度については詳細に検討する。 加えて、初年度にてn型SnS単結晶とMoO3の接合の太陽電池特性について研究を調べる過程で、n型SnS単結晶と価電子帯のエネルギー差がほとんどないp型半導体を接合することで、さらに高い発電効率が期待できることを着想した。次年度は、上記の薄膜を用いたホモ接合に関する研究に加えて、単結晶を用いた実験についても遂行する。
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