【本年度の成果】従来のSnSターゲットを持ちいた成膜では、蒸気圧の高い硫黄がターゲットから脱離することで、成膜時間に応じて得られる薄膜の組成が変化することが明らかとなった。これに対して、金属Snと硫黄プラズマを用いた新しい成膜法を開発し、組成変化なくSnS薄膜が得る手法を確立した。さらに本手法で得られた薄膜は、従来よりも高い移動度を示した。加えて、この手法は、SnSに限定されず、金属ターゲットに他の金属(W、Cu、Zn)を用いることで、簡便に各種の硫化物薄膜を作製できる汎用性の高い手法であることも明らかにした。また、従来のn型SnS薄膜の作製においては、チャンバー内に残留したClがn型伝導性の起源となっていたが、本研究ではClガスを用いることでn型SnS薄膜中のClドープ量を積極的に制御できることを明らかとした。
【本研究計画としての主な成果のまとめ】 ①SnS単結晶のへき開面とMoO3薄膜を接合しすることで、ダングリングボンドのない界面を実現し、従来のSnS太陽電池を上回る高い開放電圧を達成した。これにより、ダングリングボンドのないホモ接合の薄膜素子であれば、開放電圧の向上が可能であることを実験的に実証したこと。 ②スパッタリングにおいて、ターゲット表面の圧力を高く、基板近傍の圧力を低くする新しい手法をとることで、従来よりも低い圧力での成膜が可能となり、これによりモフォロジーや電気的特性(移動度)の向上した薄膜を得たこと。くわえて、Clガスを用いることで、n型SnS薄膜のドープ量を制御する手法を確立したこと。 ③硫黄プラズマと金属Snターゲットを用いた反応性スパッタにより、従来のSnSターゲットを用いたスパッタの薄膜よりも、3倍程度の高い移動度を示すSnS薄膜が得られたこと。さらに、この反応性スパッタは種々の硫化物に適用可能な汎用性の高い成膜手法であることを明らかにしたこと。
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