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2022 年度 実績報告書

2つの収縮メカニズムを併せ持つ負熱膨張材料の創製と熱収縮機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H01618
研究機関東京工業大学

研究代表者

磯部 敏宏  東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20518287)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード熱膨張 / 相転移 / 結晶構造解析 / フィラー / 元素置換 / コールドシンタリング
研究実績の概要

昨年度のメカニズムの解明に関する検討を通じて、Zr2SP2O12の熱膨張率はZrサイトを元素置換することでより低下させる(高機能化)させることが可能と結論づけ、Zr2-xMxSP2O12を複数した。今年度は、これらの物質の熱膨張率を測定した。フレームワークモデルで収縮する303~373 Kで最も体積熱膨張率が低かった組成は、M=Y(イットリウム)、x=0.3であり、その値は約-27.2 ppm/KとZr2SP2O12より約18%低かった。本組成は、453~673 Kでも約-16.2 ppm/KとZr2SP2O12の体積熱膨張率(-14.8 ppm/K)より低かったことから、広い温度域で、高機能化できるとわかった。M=Nb(ニオブ)、x=0.6も303~373 Kで-23.6 ppm/K、453~673 Kで約-23.3 ppm/Kと同様に高機能化に成功した。一方、イットリウムと同じ3価のAl(アルミニウム)を置換した物質では、あまり熱膨張率に変化が見られなかった。このことから、フレームワークモデルで収縮には、イオン半径が影響すると考えられた。また、これらの元素置換は373~453 Kの相転移にも影響した。これは、Zrイオンが相転移に大きく関与することが示唆された。
また、結晶構造解析から熱膨張率の算出はできたものの、それ以外の熱的性質や、電気的性質は未解明である。これらの解明にはZr2SP2O12の焼結体を作製する必要があるが、高温で分解するZr2SP2O12の焼結体の作製は極めて困難である。今年度は、コールドシンタリング法の装置を自作した。その装置を用いて、Zr2SP2O12の緻密化に取り組んだところ、相対密度約90%のZr2SP2O12を得ることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年の検討結果をもとにフレームワークモデルに影響を与えるZr元素を部分置換することで、高機能化することに成功したため。また、Zrが相転移のキーとなることも示唆されたことから、メカニズムの解明に大きく前進できたため。また、材料の基本的な性質である電気的性質や機械的性質を測定するためには、バルク体の作製が必要となるが、コールドシンタリング法が有効であると見出すことができ、また、その装置の組み立てに成功したため。

今後の研究の推進方策

今年度検討できなかった元素をZrサイトに置換することで、広い温度域と巨大な熱収縮を併せ持つ物質を創製に取り組む。また、コールドシンタリング法によりバルクのZr2SP2O12を作製し、その電気的性質、機械的性質を評価する。さらに、Zr2-xMxSP2O12についても、電気的性質、機械的性質を評価することで、元素置換が電気的性質、機械的性質に与える影響を考察する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Effect of aliovalent substitution on the crystal distortion and negative thermal expansion properties of Zr2SP2O122023

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Uehara, Ryo Kaneda, Takahiro Takei, Nobuhiro Kumada, Sachiko Matsushita, Akira Nakajima, Toshihiro Isobe
    • 雑誌名

      Ceramics International

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.ceramint.2023.04.048

    • 査読あり
  • [学会発表] 第一原理格子動力学に基づくNASICON型構造における負熱膨張性の機構解析2023

    • 著者名/発表者名
      望月 泰英, 金田 涼, 裵 星旻, 永井 隆之, 磯部 敏宏, 松下 祥子, 中島 章
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2023年年会
  • [学会発表] コールドシンタリング法によるZr2SP2O12焼成体の作製とその性質2023

    • 著者名/発表者名
      油野剛志, 有光直樹, 望月泰英, 松下祥子, 中島章, 森吉千佳子, 武井貴弘, 熊田伸弘, 磯部敏宏
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2023年年会
  • [学会発表] 計算・実験を通じたNASICON型構造における負熱膨張性の機構解析2022

    • 著者名/発表者名
      望月 泰英, 金田 涼, 裵 星旻, 磯部 敏宏, 松下 祥子, 中島 章
    • 学会等名
      第32回日本MRS年次大会
  • [学会発表] 2つの収縮メカニズムを有するα-Zr2SP2O12の合成とその熱膨張挙動2022

    • 著者名/発表者名
      磯部敏宏
    • 学会等名
      粉体粉末冶金協会2022年度秋季大会(第130回講演大会)
    • 招待講演
  • [学会発表] Negative thermal expansion in α-Zr2SP2O122022

    • 著者名/発表者名
      Toshihiro Isobe
    • 学会等名
      The 95th JSCM Anniversary Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Zr2SP2O12焼成体の作製に向けたコールドシンタリング装置の作製2022

    • 著者名/発表者名
      油野 剛志, 望月 泰英, 有光 直樹, 松下 祥子, 中島 章, 磯部 敏宏
    • 学会等名
      粉体粉末冶金協会2022年度秋季大会(第130回講演大会)

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公開日: 2023-12-25  

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